毎日新聞2016年6月25日 東京朝刊
http://mainichi.jp/articles/20160625/ddm/012/040/053000c
精神疾患の請求のうち、自殺(未遂を含む)が199人(同14人減)で、過去2番目に多い93人(同6人減)が認定された。請求が多い業種は「社会保険・社会福祉・介護」が157人(同17人増)、次いで「医療業」が96人。人手不足もあり、対人関係の業界でハラスメントや過重労働が深刻化していることをうかがわせる。
毎日新聞2016年6月25日 東京朝刊
http://mainichi.jp/articles/20160625/ddm/012/040/053000c
精神疾患の請求のうち、自殺(未遂を含む)が199人(同14人減)で、過去2番目に多い93人(同6人減)が認定された。請求が多い業種は「社会保険・社会福祉・介護」が157人(同17人増)、次いで「医療業」が96人。人手不足もあり、対人関係の業界でハラスメントや過重労働が深刻化していることをうかがわせる。
脳・心臓疾患の請求は795人(同32人増)で、認定は251人(同26人減)。請求が多い業種は「道路貨物運送業」が133人(同13人増)、次いで「総合工事業」が48人。「道路旅客運送業」も30人にのぼり、運転労働者の業務の過酷さが浮かんだ。
精神疾患で請求した人を年代別にみると、50代が287人(同70人増)と大幅増加、40代が最多の459人(同5人増)と、中高年の増加が目立った。30代は419人で高止まり、20代は281人で16人減少した。認定の原因では「心理的な負荷が極度に高い出来事」が87人で最多、「仕事の内容や量の変化」が75人、パワハラや暴行が60人だった。
14年に過労死等防止対策推進法(過労死防止法)が制定され、過労死の啓発や長時間労働縮減の取り組みが始まっている。
過労死防止学会で活動する森岡孝二関西大名誉教授は「防止法の施行で過労死への認識が高まり、請求が増えている側面もあると思うが、まだまだ長時間労働がはびこっている。労働時間の上限規制や仕事と仕事の間に一定の時間を空けるインターバル規制が求められる」と話している。
労働時間規制が不可欠
「多様な働き方」や「柔軟な働き方」という言葉がここ数年、労働の現場でよく聞かれる。労働時間に縛られない働き方で生産性を上げるのが狙いだ。政府が提出している、1日8時間、週40時間の労働時間規制の適用を除外する労働者を作る労働基準法改正案「高度プロフェッショナル制度」(残業代ゼロ制度)も、その一つだ。
労働人口が減少する中、生産性を向上させる重要性は理解できる。だが今回の労災状況まとめに見られるように、長時間労働は改まらず過去最悪レベルの過労死状況が続いている。精神疾患は残業時間だけでは労災認定されないが、認定されたうち192人が過労死認定ラインの80時間以上の残業をしており、65人は160時間以上に及んでいた。
固定残業代制度や裁量制などは労働時間が見えづらい。数時間の休憩を挟む中抜き労働など、新たな働かされ方も広がっている。これらが長時間労働隠しにつながっている面は否めない。
労働に柔軟性や多様性を持ち込むのならば、労働時間の絶対上限規制や、勤務と勤務の間の休息の長さを規定する(勤務間インターバル規制)など、労働時間を厳しく管理する制度の導入が欠かせない。【東海林智】