朝日DIGITAL 2016年8月19日
http://digital.asahi.com/articles/ASJ8D5DCKJ8DUTFK00N.html
夫も妻も、仕事を持ち、子育て中の夫婦がいるとする。仕事と家事・育児の両方を担うのは、多くの場合女性だ。女性に負担が偏るのは、男性が担うことを、社会がまだ許容していないからではないだろうか。あるイクメンの「苦悩」を通じ、考える。
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「私が毎日早く帰ることについて、複数の後輩から相談を受けていると上司から言われた」「ストライキして家事を全部投げ出してしまいたくなる」――。都内の大手建設会社勤務の男性(40)は毎日、通勤電車でツイッターでつぶやく。
1〜6歳の3人の子どもの育児と家事は、大手企業の総合職の妻と分担している。フレックス勤務で朝7時に出社し、午後4時すぎには会社を出て、保育園にお迎えに行ったり、お風呂に入れたり、食器を洗ったり。
仕事も家事も「がんばっているつもり」だが、褒めてくれる人はいない。1年半前に「つらい」と投稿してはじめた仮名のツイッターは、貴重な「本音を言える場所」だ。
会社での風当たりは強い。11年春、長男の育児のために退社時間を早めた。チームの同僚の前で、「『質と量』の『量』は難しくなるかもしれないが、理解して欲しい」と説明したが、上司は軽く「あなたなら質も量もやれるよ」。
8カ月後、面談で上司から「業務に支障が出ているという声がある」と言われた。チームの勉強会の時間を、退社後の夕方に設定された時は、「踏み絵だ」と感じた。
昨年、長女が生まれた際に、1カ月にわたって半休を取る予定だったが、1週間目に「あなたの勤務態度は、私の許容範囲を超えている」と上司からメールがきた。この時ばかりは妻も「上司とは戦わないほうがいい」と言い、仕事に戻った。「女性だったら、こんなことされなかったんじゃないか」
「少しでもミスをしたら、すぐに仕事を制約しているせいにされる」と、仕事は常に緊張状態で臨む。でも、家で愚痴は言えない。妻にとっては、夫が「仕事も家事も育児も、やって当たり前」だからだ。
子どもが生まれる前は「皆勤賞」だった飲み会も、参加をあきらめた。その場で仕事の話が進むことがあると思うと気になるが、「残業できないくせに、飲み会は出るのか」と思われそうで怖い。妻からは「デイタイムに勝負してほしい」と言われている。飲み会の翌日、参加した後輩に、「昨日何があった?」と聞いてフォローする。
「子どもはかわいいし、家族は大事。でも、辛い」