「アリ地獄」改善求めたらシュレッダー係 給与は4割減

「シュレッダー係」から営業職に復帰した男性社員=川崎市(写真省略)

「アリさんマーク」で知られる引越社グループの引越社関東(東京)が、社外の労働組合に加入して交渉を求めた男性社員(36)を「シュレッダー係」に異動させたことなどについて、東京都労働委員会は23日、不当労働行為にあたると認定し、同社などに救済措置を取るよう命じた。

「アリさん引越社」に不当認定 シュレッダー係への異動

男性社員はこの日、都労委の命令を受けて記者会見し、「今までのことが報われた。会社が誠実に対応し、労働環境が良くなることが一番の望みです」と話した。

男性は同社の全支店で月間1位になったこともある営業職だったという。だが、社員間で「アリ地獄」と呼ばれ、引っ越し作業で破損した荷物の弁償を給与から天引きする同社の制度をやめさせようと、15年3月に個人で入れる社外の労組に加入。団体交渉を始めると、営業職を外された。

団交申し入れの約4カ月後には「シュレッダー係」へ異動。監視カメラのある部屋で一日中、不要な資料を細断する仕事で、給与も約4割減になったという。

さらに、この異動の約1カ月半後、同僚約80人が出席する朝礼で突然、当時の上司から解雇通告を受けたという。

男性は異動無効を求めた裁判などを経て、今年5月に同社と和解。現在は営業職に戻った。「自分は同僚への見せしめだったが、『会社と闘ってくれてありがとう』とひそかに伝えてきた同僚もいた」と振り返った。

厚生労働省によると、全国の労組の推定組織率は昨年で17・3%。非正規雇用の増加などもあり、1975年の34・4%から、減少傾向が続いている。(根津弥)

この記事を書いた人