早まる就活に企業危機感 解禁日、もう内定の学生も

 日本経済新聞 2018/3/1

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO2756799001032018EA2000/

経団連加盟企業の会社説明会が1日に解禁され、2019年卒業予定の大学生の就職活動が本格的に始まった。ただ、インターンシップ(就業体験)に参加する学生が増え、就活前倒しの動きが止まらない。人手不足を背景に学生優位の売り手市場が続くなか、特にIT(情報技術)人材は外資企業も交え激しい争奪戦となりつつある。
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企業説明会が解禁され、就職活動が本格的にスタートした(1日午後、千葉市美浜区の幕張メッセ)
 リクルートキャリア(東京・千代田)は1日、幕張メッセ(千葉市)で約670社が参加する合同企業説明会を開いた。午前10時の開場前には長い行列ができ、人気企業のブースには立ち見が出るほどだった。

早稲田大学や法政大学なども学内で合同企業説明会を開催。法政大学は14日まで説明会を開き、約600社が参加する。法政大学キャリアセンターによると、インターンで「企業研究を早く済ませている学生が多い」という。

すでに内定を取得している学生もいる。

慶応義塾大学3年の男子学生は「もうコンサルタント系の会社から内定を2つ、もらっている」と話す。経団連非加盟の企業やスタートアップ企業では既に選考が進んでいる。ある不動産大手の人事担当者は「外資系は採用活動が早いので優秀な人材が先に囲い込まれてしまう」と危機感を抱き、「外資系が多く集まるイベントに参加して、早めに学生に接触するようにしている」と打ち明ける。

リクルートワークス研究所によると、新卒1人に対する求人倍率は18年卒で1.78倍。6年連続で上昇した。採用計画を満たせなかった企業も多く、今回も売り手市場は続く見通しだ。

なかでもIT人材の争奪は激しい。中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)が日本国内で提示した学士卒エンジニアの初任給は約40万円と、競合する日本メーカーの2倍近い金額だ。「世界の競合と同じ水準にした。日本企業の初任給が低いのであって、高いとは考えていない」(ファーウェイ・ジャパン)という。

初任給だけではない。人事コンサルティング大手の米マーサーの調べによると、中国やシンガポールでは企業の部長給料が平均2300万〜2400万円。一方、日本は1981万円にとどまる。厚遇を武器にした外資勢の攻勢が日本企業にとって大きな脅威だ。

ただ、手をこまぬいているわけではない。NECは海外での研究職の新卒採用に力を入れ、インド工科大学で人工知能(AI)関連などを学んだ人材をここ3年、6〜7人採用している。

LINEは通常の技術者向けの選考コースより固定年俸が約100万円高い「ハイレベル選考」を用意。サイバーエージェントは4月以降に入社するエンジニア職を対象に、一律の初任給制度を廃止する。AIなどの高度な技術を持つ学生には、最低でも720万円得られる年俸を提示する。メルカリは入社前のインターンでの実績などに応じて初任給を上乗せする制度を導入する。

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