年収800万円が半減、大手から転職して大失敗した50代の“甘い読み” (12/29)

年収800万円が半減、大手から転職して大失敗した50代の“甘い読み”
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2019/12/29(日) 8:54配信 日刊SPA!

転職失敗し年収半減、再就職先で馴染めない相馬隆さん(仮名・52歳)
早期退職者募集が6年ぶりに1万人を超えるなど、過酷さを増す50代。会社からはお荷物扱いされ、妻からは熟年離婚を切り出され……そんな「50代の試練」に直面する先輩たちから、“憂鬱な50代”にならないための生き方を学び取る! 今回はサラリーマンが「転職失敗」した事例。専門家にリスクと対策を聞いてみた。

院卒、大手企業でも会社の外に出れば年収300万円の価値
早期退職者募集が加速しつつある中、今の職場で上がり目がなければ、退職してセカンドキャリアをと考える人も増えるだろう。しかし、中高年の転職は予想以上に厳しい。大手メーカーに27年間勤めた相馬隆さん(仮名・52歳)は、退職して初めて自分の市場価値の低さに気づき、唖然としたという。

「MARCHの理系院卒で前職も大手ですから、それなりの待遇ですぐに再就職できると思っていました。それが、いざ転職活動してみると、エージェントから提示されたのは、中小企業で年収300万円台の案件ばかり。退職前の年収が800万円で、多少減るのは覚悟の上でしたが、まさか半分以下まで減ってしまうとは……」

 独身ならばそれでも割り切れたが、相馬さんの2人の息子は私立に通う高校生と中学生。

「年収300万円台では、とても学費を払い続けられない。かといって、転校させるわけにもいかず、大学にも進学させたいので、早期退職金は老後資金どころか、ほとんどが学費に消える予定です」

 転職活動が長引き、失業保険が途絶えれば、ますます苦しくなっていく。真綿で首を絞められるような不安とプレッシャーのなか、退職3か月後に年収360万円の中小企業に再就職を決めた。

「退職時に『なんとかなる』と妻に見えを切った手前、家庭での発言権はほとんどありません。以前は1000円近い定食を気にせずランチに食べていましたが、今は朝早く起きて家族の分の弁当を作るのが自分の日課」

 昼休みは自分で作った弁当を公園で食べるという相馬さん。

「職場にはまだ馴染めないし、意外と同じような境遇の人が多いんですよ」

 たまに外で飲めば、つぶれるまで飲んでしまうのだとか。

「転職先では“落ちぶれたおっさん”扱いされているようで……」

転職失敗の反省点
相馬さんは反省点として「楽観的な憶測と割増退職金だけでは老後までは食いつなげない」をあげる。

「小遣いも5万円からほぼゼロにカットされたので、もっぱら晩酌は自宅で発泡酒です。本当に、なぜ早期退職前に転職先の目途を立てておかなかったのか? 目先の割増退職金と根拠のない自信で目が眩んだ自分を、『甘くないぞ』と叱ってやりたいです」

 計画性のない転職は厳禁だ。

<職場の試練に立ち向かう処方箋>
「転職失敗」の回避法は、会社の肩書に頼らないことと人事ジャーナリストの溝上憲文氏が指摘する。

「会社の名刺で仕事や人付き合いをしている50代は、『看板を外したら価値も年収も半減』と考えておくべき。シャープを早期退職した私の知人は、熟年離婚も重なり、1年後には牛丼チェーンでアルバイトしていました」

 だからこそ、いかに個人的な信用を得るかがカギになる。

 人材育成を支援するFeelWorks代表の前川孝雄氏はこうも指摘する。

「50代での転職成功は、ほとんどがリファラル採用(縁故採用)。だからこそ、名刺の肩書抜きで繋がる社外の人と関係性を築いておくことが重要。もし、コネがないなら、年収を下げてでも自分の価値を発揮できる企業に転職しましょう。

 高年収だけを追い求めると、期待値が高い分、成果を出せないと、翌年から給料はあっという間に下げられる。むしろ、働きがい重視で、自分が活躍できる場を見つけたほうが、結果的に長く働けます」

【人事ジャーナリスト 溝上憲文氏】
日本人材ニュース編集委員。経営、ビジネス、人事、雇用、賃金、年金問題を中心に執筆活動を展開。著書に『人事評価の裏ルール』(プレジデント社)など

【FeelWorks代表取締役 前川孝雄氏】
青山学院大学兼任講師。「50代からの働き方研修」で400社以上を支援。新著『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHPビジネス新書)が発売中

<取材・文/週刊SPA!編集部>

―[50代になる憂鬱]―
日刊SPA!
 

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