2020年に施行される米カリフォルニア州労働関係法の主なトピック(米国)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/12/080fc81e2933db1b.html
ロサンゼルス発 2019年12月27日 jetroビジネス短信
ジェトロは12月24日、レポート「カリフォルニア州労働関係法 2020年の主なトピック」を公表した。仲裁合意の禁止、将来の雇用を制限する和解契約の禁止、独立請負人の判断テストの成文化、職場環境の改善、最低賃金の引き上げなど、日系企業にも影響が見込まれる変更がある。
公表されたレポートで取り上げられた法令の概要は以下のとおり。
1. 仲裁合意の禁止(AB−51):雇用主が応募者または従業員に対して、採用、継続雇用または雇用に関する利益の見返りとして、公正雇用住宅法(FEHA)または州労働法の違反について、権利や手続きを放棄するよう要求することを禁止する(2019年12月18日記事参照)。
2. 将来の雇用を制限する和解契約の禁止(AB−749):雇用に関する和解契約の中で、紛争当事者である雇用主またはその親会社、子会社、関連会社もしくは下請企業との間の将来の就労を禁止または制限する条項を定めることを禁止する。
3. 独立請負人の判断テストの成文化(AB−5):独立請負人と従業員の区別に関する判断テスト(Dynamexテスト)が成文化され、従前に比べ、独立請負人として認められる範囲が狭くなる(2019年9月27日記事参照)。
4. 搾乳用の設備提供義務の強化・拡大(SB−142):一定規模の雇用主は、搾乳用の設備として、トイレではない、職場に近接している、外から見えない、搾乳中に立ち入られないなどの要件を持つ部屋または場所を、従業員に提供する義務が課される。
5. 違法雇用行為に係る申し立て期限の延長(AB−9):雇用上の差別的行為、ハラスメント、報復的行為といった違法雇用行為についての申し立て期限が、1年から3年に延長された。
6. セクハラ予防研修実施期限の延期(SB−778):従来、5人以上の従業員を使用する雇用主に対し、管理職は最低2時間、管理職以外は最低1時間のセクハラに関する研修教育を、2020年1月1日までに実施する義務などが課されていたが、改正法では2021年1月1日まで期限が延期された。
7. 髪質や髪型に基づく差別の禁止(SB−188):髪型を規制する職場のドレスコードが特定の髪質を持つ人種に与える負担や影響を踏まえ、髪質や髪型に基づく差別は、真に必要な場合などを除き、人種に基づく差別として違法とされる。
8. 業務上の重大な負傷などの報告方法の変更(AB−1804):業務上の重大な負傷もしくは疾病または死亡が発生した場合の州労働安全衛生部(The Division of Occupational Safety and Health)への連絡方法について、従来の電話または電子メールから、電話または今後開設されるオンラインシステムにより連絡することに変更された。
9. 州最低賃金の上昇:2020年1月1日から、州の最低賃金が、従業員25人以下の場合には時給12ドル、従業員26人以上の場合には時給13ドルとなる。ただし、州内にはより高い水準を設定している市も存在する。
詳しくは、レポートを参照のこと(前年のレポート参照)。
なお、新法ではないが、カリフォルニア州では2018年から、嗜好(しこう)用の大麻使用が合法化されている。日系企業からは職場環境への影響を懸念する声が聞かれるが、スクワイヤ・パットン・ボグズ法律事務所の須山大樹カリフォルニア州弁護士は「アルコールと同様、大麻影響下での業務禁止や職場への持ち込み禁止、また薬物検査も可能な場合はあるが、医療用大麻を使用する人に対する差別やプライバシー侵害という訴訟リスクもあるため、弁護士に相談しながら対応すべき」とする。
(北條隆)
(米国)