京都新聞 社説 「「氷河期」計画 世代超えた就労の支援を」 (12/30)

社説:「氷河期」計画 世代超えた就労の支援を
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京都新聞 2019/12/30(月) 16:00配信

 バブル経済崩壊後に就職難だった「就職氷河期世代」を対象に、就労や正規雇用への転換を支援する政府の行動計画がまとまった。

 来年度からの3年間で650億円超の予算を確保し、この世代の国家公務員の中途採用を拡大するほか、交付金制度も設けて就職活動時の経済的な負担を軽減するという。

 氷河期世代が大学や専門学校などを卒業した1990年代半ばごろからの約10年間は、企業が正社員の採用を絞り込み、政府の規制緩和策もあって派遣労働の範囲が拡大した。

 新卒時の就職活動からチャンスに恵まれず、安定した職に就けなかったり、自信を失って引きこもりになったりしている人も多い。不況を乗り切ろうとする産業界や国策の犠牲となった世代といえよう。

 すでに30代半ばから40代半ばになった当事者からは、政府の対応が遅すぎるとの声も聞かれる。着実な支援で安定就労につなげる必要がある。

 政府は氷河期世代の100万人に集中支援が必要とみており、6月に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太方針」で、この世代の正規雇用を3年間で30万人増やすとした。

 国家公務員の中途採用拡大はその中核の一つで、人事院による氷河期世代向けの統一試験を実施し、各省庁が足並みをそろえて積極的に採用を打ち出すようにするという。

 地方自治体にも採用の促進を要請するとともに、民間での積極採用も促す観点から、氷河期世代に限った採用活動を全面解禁することを検討している。

 氷河期世代の採用を巡っては、兵庫県宝塚市が今夏に正規職員を募集したところ、約600倍もの応募が殺到。安定雇用の受け皿確保が喫緊の課題であることを示した。

 正規雇用を目指して資格を取得するなど自己研鑽(けんさん)に励む人も多いが、当事者からは、40歳前後で非正規雇用や無職期間が長いと就職活動で門前払いされるとの声が上がっている。

 採用数を増やすだけでは、こうした課題を解決できないだろう。

 政府は行動計画で、全国のハローワークに専門窓口を設けて就職相談から職場定着までの一貫した支援体制を構築すると明記した。当事者の事情を踏まえながら、求人企業との橋渡しを進めてほしい。

 引きこもりの人に対しては、個別に訪問して相談に乗る「アウトリーチ支援員」を地域に配置するとした。集中期間とした3年にこだわらず、長期的な視点に立った支援を求めたい。

 重要なのは、年齢を問わず能力を生かして活躍する場があるという機運を社会全体で高めることだろう。働き方を見直すなど、非正規や無職を経ても職場に定着できる環境づくりには何が必要か、知恵を集めたい。

 氷河期以降の世代でも非正規雇用は多く、正社員も職を失うリスクはある。世代を超えて再チャレンジできる社会づくりこそが重要だ。 

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