国立循環器病センター(大阪府吹田市)に勤務していた看護師村上優子さん(当時25歳)がくも膜下出血で死亡したのは「公務災害」だとして、両親ら遺族が国家公務員災害補償法に基づく遺族補償の支払いを国に求めた行政訴訟の控訴審判決が10月30日、大阪高裁であった。大谷正治裁判長は、「村上さんの業務は、量的な過重性に併せ、質的な面から見ても過重で、くも膜下出血の発症には公務起因性が認められる」などとして、公務災害と判断した一審の大阪地裁判決を支持し、国に約630万円の支払いを命じた。一審の判決を不服とした国側の控訴を棄却した。(山田利和・尾崎文壽)
判決によると、村上さんの業務の量的過重性(労働時間)については、時間外労働を50−60時間と算定し、「村上さんの職場では、時間外労働が恒常化しており、相当長時間に及んでいた」と指摘した。
また、質的過重性については、「変則的な夜勤・交代勤務に関する勤務シフトの度合い、(一日の)勤務と次の勤務までの時間、深夜勤や準夜勤の頻度がどの程度であったかなどの観点から検討、評価すべき」とした上で村上さんの勤務実態について言及。「日勤から深夜勤、準夜勤から日勤の間隔が5時間程度で、この下では、通勤に要する時間や家事などを考慮すると、確保できる睡眠時間は3、4時間程度で、疲労回復のための十分な睡眠が取れなかった」などと、短い間隔での勤務や恒常的な残業などが重なっていたと判断した。
さらに、村上さんが勤務していた脳神経外科病棟では、「入院患者の生活介助の割合が高く、勤務内容としては身体的負担が高かった上に、不規則な夜間交代制勤務によって身体的・精神的に高い負荷を与えていた」と指摘。加えて、在職3年10か月の村上さんが、同僚の中では経験年数が長く、中堅看護師として看護研究や新人看護師の教育などを含め、同センターに勤務する看護師として重要な業務に従事していたことを挙げ、「くも膜下出血の発症前の1か月以降には、とりわけ身体的負荷が大きい状況で勤務を続けていた」とし、「これらを総合すると、時間外労働時間の量に併せ、その質的な面からも慢性の疲労とその蓄積、過度のストレスの持続に連なる過重なもので、村上さんの基礎疾患の脳動脈瘤を自然的経過を超えて増悪させる要因となり得る負荷のある業務と認めるのが相当」などとして、公務災害と認定した。
国側は、村上さんの業務が「過労死認定基準」の月80時間以上の時間外労働に達していないことなどを主張していた。判決では、「時間外労働時間の量のみに基づくのは相当ではなく、過労死認定の判断は、時間外労働時間の量に併せ、業務の質的な面を加味して総合的に判断する必要がある」などとして国側の主張を退けた。