九電工社員自殺は過労 原因認定、9900万円賠償命令 福岡地裁判決
「西日本新聞」2009年12月3日
2004年、九電工(福岡市)の男性社員=当時(30)=がうつ病になり自殺したのは、過酷な長時間勤務などが原因として、男性の遺族が同社の責任を問い約1億2千万円の損害賠償などを求めた訴訟で、福岡地裁(岩木宰(おさむ)裁判長)は2日、原告の主張をほぼ全面的に認め、同社に約9900万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
同社は「仕事はチームで行っており、男性の時間外勤務だけが突出して長いことはあり得ない」と主張したが、判決は、男性が勤務した事務所の警備記録から実際の勤務時間を算出。「自殺前の時間外労働が月平均150時間を超えており(時間外勤務などの労使間の取り決めである)三六協定の基準を著しく超過している」と認定した。
さらに「就労状況から男性が健康を害することは容易に認められ、業務と自殺の因果関係は明らか。男性が労働時間を過少申告しているのを認識しながら、指導をせず、放置した」として、自殺原因が私生活にあるとの同社の主張を退けた。
判決によると、男性は1998年4月に入社、福岡支店で現場監督業務を担当。2003年8月から大手ゼネコン下請けのビル新築工事の現場担当となり、04年7月まで、毎月123−176時間の時間外勤務を強いられた。会社から十分な支援もなかったため、うつ病になり、同年9月6日、自宅マンションから飛び降り自殺した。
福岡中央労働基準監督署は07年4月、過労自殺と認定したが同社は認めなかったため、08年1月に提訴した。判決に男性の妻(34)は「感謝している。国が過労自殺と認めたとき会社に謝罪してほしかった」と語った。