産経新聞 震災雇用不安じわり 関西でも解雇、賃金未払い

産経新聞2011年4月20日

東日本大震災の影響による解雇や賃金未払いなどの雇用不安が、関西にも広がりつつある。派遣やアルバイトなど立場の弱い労働者に対するしわ寄せが目立ち、個人加盟の労働組合に寄せられる相談の中には、会社側が震災に「便乗」していると疑われる例も。労働問題に詳しい専門家からは「復興まで時間がかかれば問題がさらに深刻化する可能性もある」との指摘も上がっている。

「震災を口実に給料を払ってもらえない」。大阪市中央区のコールセンター会社に勤務していたアルバイトの男性(23)は、震災翌日の3月12日、自宅待機を命じられた。3月末が支給日だった賃金21万円は振り込まれておらず、休業手当も支払われていない。

この会社はNTT西日本の3次下請けとして、光回線サービスの電話勧誘を行っていたが、NTT西から震災後に勧誘を自粛するよう要請され、営業を停止した。男性の問い合わせに対し、社長は「震災の影響で取引先からの入金が遅れている」と文書で回答したという。

男性を含むアルバイト計26人の未払い賃金は、3月末分だけで総額264万円。うち14人は個人加盟の労働組合「地域労組おおさか青年部」(大阪市北区)に入って団体交渉しているが、男性は「震災前から資金繰りが厳しかったのではないか」と感じている。

「管理職ユニオン・関西」(同)などが今月14〜16日に実施した電話相談では、大阪、京都、滋賀の各府県の窓口に震災に絡む相談が計18件寄せられた。

旅行会社の事務職の女性は、11日に賃金の40%カットを会社から通告され、その4日後に解雇された。リフォーム会社勤務の男性は、大手家電メーカーの福島県内の工場から商品の調達ができなくなり、営業が難しくなったという理由で7日に解雇されたが、後日、会社を訪ねると別の人が採用されていたという。

相談員を務めた「アルバイト・派遣・パート関西労働組合」の大橋直人事務長は「福島第1原子力発電所の事故を含め、影響が読みきれない。派遣社員やアルバイトなどを中心に今後も相談会を開く必要がある」と話す。

震災による雇用への影響について、関西大の森岡孝二教授(企業社会論)は「関西でも製造業は部品供給が制約され、個人消費の縮小でサービス業も苦戦している」と指摘。「今後、関西でも雇用不安が一挙に拡大する可能性がある」と懸念している。

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