厚生労働省は12日、過去3年間に職場でパワーハラスメント(パワハラ)があったと回答した企業が32%に上ったとする調査結果を発表した。労働局に寄せられる職場のいじめや嫌がらせに関する相談件数がここ数年で急増していることを受けた調査で、厚労省による全国調査は初めて。(詳細は厚労省「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」報告書)
また、従業員に対する調査では、パワハラを受けたことがあると回答した従業員は25・3%で、このうち46・7%は会社への相談などは何もしなかったと答えた。
パワハラ発生の背景には、リストラによる人員削減や企業間競争の激化などがあるとみられ、厚労省は、今後の対策に反映させる考え。
調査結果によると、過去3年間に従業員からパワハラの相談を受けた企業は45・2%あり、このうち7割に当たる32・0%の企業が、パワハラに該当するケースが実際に1件以上あったと回答した。該当したケースは平均で3・5件だった。
従業員調査では、加害者との関係について「上司から部下」が77・7%を占め、「正社員から正社員以外」も10・6%あった。厚労省は「雇用形態の多様化で、立場の弱い派遣社員などが被害に遭っている可能性がある」としている。
外部の機関もしくは会社に相談したのに、会社は「特に何もしてくれなかった」と答えた人が35・4%、「会社はパワハラを受けていると認識していなかった」と答えた人が16・7%(複数回答)いた。
パワハラの具体的な内容では「おまえが辞めれば改善効果が300万円出ると会議で言われた」「髪の毛を引っ張られ、火の付いたたばこを投げられた」などがあった。
調査は7〜9月にかけ、民間企業および、これとは直接関連のない民間企業の従業員にそれぞれ実施。企業は従業員30人以上の1万7千社を対象にし、4580社から回答があった。回答率は27・3%。従業員にはインターネットで実施して、20〜64歳の男女計9千人から回答があった。
パワーハラスメント 職場でのいじめや嫌がらせ。厚生労働省は1月、有識者でつくる「円卓会議」で、上司から以外に、同僚や部下からのいじめもパワハラと定義すべきだとした報告書を初めてまとめた。具体的には大声でしかったり同僚の前で無能扱いしたりする「精神的な攻撃」や、遂行できないような仕事を押し付ける「過大な要求」のほか、業務上必要がない仕事を強要する「過小な要求」など六つの定義に分類した。