読売 過労死防止「立法早く」 超党派議連が骨子案

読売新聞 2013年10月18日

 過労死を防ぐための基本法の制定へ、国会が動き始めた。与野党七十人以上が加わる超党派の国会議員連盟の各党代表者が十七日、世話人会を開き、国の責務などを盛り込んだ骨子案をまとめた。各党で議論し、開催中の臨時国会での成立を目指す。

 一九八〇年代後半から社会問題化した過労死は、若年化も目立つ。遺族らは、国レベルで対策を進めるよりどころになる法律が必要とし、二年前に実行委員会をつくり、制定を求めてきた。今年六月に議連が結成され、実行委員会の案を基に骨子案を作成した。

 名称は「過労死等防止基本法」。個人の問題ととらえられがちな過労死を、過労自殺や過重労働による疾患も含めて、社会的に取り組むべき問題と明記。国の責務として、遺族や学識経験者で構成する会議の意見を聴いて基本計画を作り、総合的な対策を進めることを盛り込んだ。過労死の実態も調べ、政府が毎年国会へ報告するとしている。

 厚生労働省によると、昨年度は脳・心臓疾患による過労死で百二十三人が労災認定された。精神疾患による自殺は九十三人が認定された。(柏崎智子)

◆署名46万人 遺族ら訴え

 国会議連の会議後に遺族や弁護士らが開いた緊急集会では、過労死等防止基本法の一日も早い制定を求める声が相次いだ。

 「若い人やお父さんたちのため、息子と私の二人分の魂を込めたい」。神戸市の西垣迪世(みちよ)さん(69)は二〇〇六年、女手一つで育てた二十七歳の一人息子を亡くした。IT企業のシステムエンジニアで、長時間労働の末、うつ病になり、会社の寮で治療薬を大量に飲んだ。ブログに「なぜ日本人はこんなに働くのか」「普通の生活がしたい」と悩みをつづっていた。「あの子のために必死に働いた私の人生も終わった。過労死のない社会という息子の思いを実現してからあの世へ行きたい」と涙ながらに語った。

 過労から、くも膜下出血で倒れ、後遺症で全盲になった横浜市の山下照之さん(51)は「会社のためと仕事にまい進し、気付いたら体はぼろぼろ。そうなる前に、会社や仲間がストップをかける仕組みが必要」と話した。

 改善が見えない状況に、過労死弁護団全国連絡会議などは〇八年、法制化を求め決議。署名は四十六万人分を超え、自治体の意見書の可決も増えている。今年五月には、国連社会権規約委員会が日本政府へ是正を勧告した。

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