残業代ゼロ、導入の方針 厚労省、成長戦略に明記へ

朝日新聞 2014年5月28日05時33分

写真・図版:政府は「残業代ゼロ」の働き方を成長戦略に採り入れる(省略)

 労働時間の長さにかかわらず賃金が一定になる働き方を、厚生労働省が導入する方針を固めた。働き手が「残業代ゼロ」で長時間労働を強いられることを懸念し、厚労省は当初は慎重だったが、生産性向上に役立つとする産業界の要請を受け入れる。働き過ぎを助長する恐れがあり、反発が強まりそうだ。

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 厚労省は28日の産業競争力会議(議長=安倍晋三首相)に、働いた時間と関係なく、成果で賃金を決める仕組みを提案する。労働規制を所管する厚労省が導入方針を固め、6月末に改定される政府の成長戦略に盛り込まれることが確実だ。

 厚労省案は、為替ディーラーやファンドマネジャーなど「世界レベルの高度専門職」を対象に労働時間の規制を外す。ただ、具体的な対象の範囲や年収条件は、労使代表が加わる厚労省の審議会で検討する。

 いまは1日8時間を超えて従業員を働かせると、企業は賃金に上乗せしてお金を払う義務がある。企業に負担させることで長時間労働を防ぐ仕組みだ。厚労省案は、この規制を外す。労働時間を想定して賃金を決める「裁量労働制」と異なり、働き過ぎを防ぐために深夜や休日労働に割増賃金を支払わせる規制もない。

 同様の仕組みは、第1次安倍政権でも、労働時間の規制を除外する「ホワイトカラー・エグゼンプション」として、年収900万円以上の労働者を対象に検討された。ただ、「過労死を招く」と世論の反発を招き、導入を断念している。

 28日の会合には、新制度導入を4月に提案した競争力会議の民間議員である長谷川閑史(やすちか)・経済同友会代表幹事も修正案を出す。当初案は対象に一般社員も含めたが、修正案は年収条件を外し、「幹部候補」などに限定する。厚労省に対象者の拡大を求める。

 成長戦略に明記されることで「残業代ゼロ」となる働き方が実現に向けて大きく動き出す。具体化には労働基準法改正が必要で、野党や労働組合から批判が強まることも予想される。(山本知弘)

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