同一労働同一賃金:自民、公明、維新3党が法案修正案了承

http://mainichi.jp/select/news/20150612k0000m010078000c.html?fm=mnm
毎日新聞 2015年06月11日 20時52分(最終更新 06月11日 22時26分)
  
 ◇修正で骨抜きに 「均衡待遇」の考え方を追加
 
 自民、公明、維新の3党は11日、各党の労働法制に関する部会で、正規雇用か非正規かにかかわらず、同じ職務の労働者に同じ賃金を支払うことなどを求める「同一労働同一賃金法案」の修正案を了承した。3党で共同提案し、今国会で成立する見込み。ただ、当初案のうち、正規社員と非正規社員を同じ待遇にするとしていた部分を修正。「同一賃金」を担保する根幹部分が「骨抜き」になり、実効性は極めて低くなった。

 当初案では、派遣労働者の待遇と、派遣を受け入れている企業の正社員の待遇について「均等の実現を図る」としていた。しかし、自公両党との修正で、業務内容や責任の程度などを踏まえて「均等な待遇及び均衡のとれた待遇」とする内容に変更。職務だけでなく勤続年数や責任の重さなども考慮してバランスを取る「均衡待遇」の考え方を追加し、正規・非正規間の賃金格差を容認する余地が生まれた。

 さらに、1年以内の法改正や立法措置を義務づけていた部分について、「3年以内」に先延ばしした上で、法改正などをせず、厚生労働省の通達などでも良いこととした。

 大幅な修正になったが、維新側は「一歩前進だ」と評価する。しかし、ある自民中堅議員は「一つ残らず骨を抜いた」と話す。

 厚労省によると、派遣労働者の賃金は正社員の約7割。同一労働同一賃金が実現すれば、派遣労働者など非正規雇用を抱える企業の負担は大きくなる。実効性のある対策には経団連など財界の猛反発が予想され、政府は実現に否定的。安倍晋三首相も国会審議で「直ちに賃金を同一にすることは困難だ」と答弁していた。【阿部亮介、東海林智】

 労働問題に詳しい日本労働弁護団の棗(なつめ)一郎弁護士の話

 「均衡のとれた待遇」の表現が入ったことで法案に意味はなくなった。現行法でも「均衡への配慮」は明記されているが、実効性がないから正社員と派遣労働者に大きな賃金格差がある。「同一賃金」を強制する方向に向かわなければ実効性は担保されない。

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