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毎日新聞 2015年07月29日 21時33分(最終更新 07月29日 22時39分)
政府・与党は、所得の高い一部の労働者を労働時間規制の対象から外す「高度プロフェッショナル制度」の導入を柱とする労働基準法改正案について、今国会での成立を断念する方針を固めた。与党幹部が29日、明らかにした。民主、共産両党や連合などが強く反対する中、強引に審議すれば、参院での安全保障関連法案の審議にも影響しかねないと判断した。今国会の会期を大幅延長したため、秋の臨時国会は短期になる可能性があり、改正案の成立は来年の通常国会以降に持ち越される公算が大きい。
多様な働き方を促すことを目指す改正案は、安倍政権が成長戦略の目玉に位置付けている。金融ディーラーなど専門的な仕事に就き、年収が「1075万円以上」の労働者が制度の対象になる。
しかし、1日8時間を超える労働に残業代を支払うなどの労働時間規制がなくなるため、野党は「残業代ゼロで長時間労働を助長する」と改正案を批判。今後、年収要件が緩和され、対象が拡大することへの警戒感もある。
改正案では、「みなし労働時間」に基づき賃金を支払う裁量労働制の適用も拡大され、企画立案と一体で営業を行う営業職などが対象になる。
国会会期は9月27日まで延長されたものの、安保関連法案を巡って与野党は激しく対立している。6月中旬に衆院を通過した労働者派遣法改正案の審議は、日本年金機構の個人情報流出問題のあおりで、参院での審議が与党の想定通りに進んでいない。こうした中で労基法改正案の成立を目指せば、安保関連法案や労働者派遣法改正案の審議がストップする可能性がある。
このため、与党は改正案を衆院で審議入りさせたとしても、会期内成立は見送る方向だ。【阿部亮介、水脇友輔】