電通に労働局が立ち入り 長時間労働、全社で常態化疑い

朝日digital 2016年10月14日
http://digital.asahi.com/articles/ASJBF7RMPJBFULFA04B.html

 電通本社ビルに入る労働基準監督署の監督官ら=14日午後1時、
東京都港区、金川雄策撮影

広告大手、電通の女性新入社員(当時24)が昨年末に過労自殺し、労災認定されたことを受け、東京労働局と三田労働基準監督署は14日午後、労働基準法違反の疑いで電通の本社(東京都港区)と支社数カ所に一斉に立ち入り調査に入った。違法な長時間労働が全社的に常態化していた疑いがあるとみて、労務管理の実態を詳しく調べる。

 この日の立ち入り調査は、労基法に基づく「特別監督指導」と呼ばれるもので、調査の結果、法令違反が見つかり、悪質と判断されれば刑事事件として立件することができる。今回の労災認定は、過労自殺した新入社員の問題にとどまらず、雇用者の刑事責任が問われる事態に発展する可能性が出てきた。

 労災認定を受けたのは、入社1年目だった高橋まつりさん。昨年12月25日、都内の電通の女子寮で自殺した。三田労基署は「仕事量が著しく増加し、時間外労働も大幅に増える状況になった」と認め、先月30日に労災認定した。三田労基署は、高橋さんの1カ月(昨年10月9日〜11月7日)の時間外労働を約105時間と認定している。

 遺族側の代理人弁護士によると、高橋さんの時間外労働は、電通が労基署に届け出た上限の時間を大幅に超えていた。東京労働局はこうした事実が労基法違反にあたるとみて問題視している。電通では、1991年にも入社2年目の男性社員(当時24)が長時間労働が原因で自殺し、遺族が起こした裁判で最高裁が会社側の責任を認定した。若手社員の過労自殺が繰り返されたことも重くみている。

 全社的に労働時間の把握がずさんで、長時間労働が野放しになっている可能性もあるとみて、抜き打ちで調査に入って実態解明に乗り出す。本社には午後1時から、長時間労働の調査を専門に行う「過重労働撲滅特別対策班」のメンバーなど8人が立ち入り調査に入った。

 塩崎恭久厚生労働相は12日の衆院予算委員会で、「(同じ企業で)再び自殺事案が発生したことは本当に遺憾の至りだ」と述べ、「過労死等に関する労災請求があった事業場に対し、監督・指導を徹底したい」と強調していた。東京労働局長は11日、電通の幹部を呼び、再発防止に向けて労働時間の適正管理や、実効性のある過重労働の防止対策を講じるよう求めていた。(千葉卓朗)

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