過労死ライン上回る「90h超の固定残業代」の無効求め、自販機ベンダー社員が提訴 (7/26)

過労死ライン上回る「90h超の固定残業代」の無効求め、自販機ベンダー社員が提訴

弁護士ドットコムNews 2019年07月26日 17時08分
 
〔写真〕会見の様子(2019年7月26日、編集部撮影、厚生労働省記者クラブ)
 
過労死ラインをオーバーする「90時間超の固定残業」は無効だとして、男性社員5人が7月26日、勤務先の自販機ベンダー「大蔵屋商事」(埼玉県川口市)に対し、未払い残業代として総額約2800万円を求めて、東京地裁に提訴した。
 
原告5人は「自販機産業ユニオン」の組合員。このうち2人が記者会見に出席し、「団体交渉を続けてきたが、合意にいたらなかったため訴訟を決断した」と説明した。
 
●契約書もなかった
訴状によると、男性たちには毎月、固定残業代11万5000円がついていた。原告の1人を例にすると、月給はおよそ28万円(基本給16万9000円+固定残業代11万5000円)だ。
 
求人サイトには、90時間を超える残業相当であると書かれてはいるものの、雇用契約書がなく、具体的に何時間分の残業代に相当するかは明確になっていなかった。
 
男性たちは自販機のルートドライバーで自販機の商品補充や集金などを担当している。原告によっては多いときで月150〜200時間の残業があったのに、同じ額しか払われていなかったという。
 
こうした働き方について、労働基準監督署から1月10日付で東京北営業所(埼玉県和光市)、3月8日付で葛飾営業所(東京都葛飾区)に是正勧告が出て、未払い賃金が一部払われている。
 
●固定残業、無効になった裁判例も
今回問題にしているのは、そもそもこの固定残業代が無効ではないかという点だ。固定残業代を除いた給与などから算出すると、男性たちの固定残業は平均で月94時間に相当するという。
 
〔写真〕代理人の明石純平弁護士(左)と高橋寛弁護士 代理人の明石純平弁護士(左)と高橋寛弁護士(2019年7月26日、編集部撮影、厚労省記者クラブ)
 
原告側は契約書がないなど、固定残業について説明の不備があることや、過労死ライン(月80時間)を超える長さであることなどを理由に、固定残業の無効を主張。現在の固定残業代を含めた金額(原告の一例だと26万円)を残業代計算の基礎とすべきとしている。
 
固定残業代の有効性をめぐっては、月80時間(東京高裁平成30年10月4日判決)や月83時間(岐阜地裁平成27年10月22日判決)の固定残業を無効とした事例などもある。
 
なお、働き方改革関連法では単月100時間、複数月80時間などの残業規制があるが、中小企業は2020年4月からの適用となっている。
 
大蔵屋商事は「訴状が届いていないのでコメントは控えたい」としている。
 

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