公益通報した京都市職員への停職処分取り消し命じる判決 京都地裁
毎日新聞2019年8月8日 21時17分(最終更新 8月8日 21時26分)
児童相談所の内部資料を不正に持ち出したなどとして停職処分を受けた京都市職員の男性(48)が、公益通報で児相の対応の不備をただすための正当な行為だったとして市に処分取り消しを求めた訴訟の判決で、京都地裁は8日、取り消しを命じた。藤田昌宏裁判長は判決理由で「職業倫理に基づく行為で懲戒処分は重きに失する」と述べた。
判決などによると、児相に勤務していた男性は2014年10月ごろ、担当外の児童に関する資料を閲覧し、市内の児童養護施設の施設長が少女に性的虐待をした疑いがあるとの相談が寄せられていたことを把握。相談から1カ月半がたっており、児相が放置した可能性があるとして、15年3月と10月に市の公益通報窓口の弁護士に内部通報し、証拠として資料を持ち出した。施設長は児童福祉法違反容疑で逮捕され有罪判決が確定したが、男性は担当外の資料の閲覧や持ち出しを理由に停職3日の懲戒処分を受けた。
判決は担当外の資料の閲覧について「禁止されていたとは認められない」などとして懲戒事由に当たらないと判断。資料の持ち出しは「重要な証拠を手元に置く目的があり、強く非難すべき点はない」として、懲戒処分は著しく妥当性を欠くと結論付けた。
男性は判決後の記者会見で「声を上げた人間がこんな報復をされて黙っていたら社会のためにならない」と述べた。市は「控訴する方向で早急に対応したい」とコメントした。【国本ようこ】
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