アスベスト国賠訴訟 遅延損害金の起算日は『がん診断日』と認める判決 神戸地裁 (9/17)

□石綿訴訟で国基準上回る賠償命令
NHK News 2019年09月17日 12時06分
 
アスベストを扱う工場で働いていた男性2人が、国が行っている健康被害を受けた人の救済策は賠償の基準が不当だと訴えた裁判で、神戸地方裁判所は2人の訴えを認めて、基準を上回る金額を支払うよう国に命じました。
 
アスベストによる労働者の健康被害をめぐっては、国は5年前の最高裁判所の判決を受けて、昭和33年から46年までの間に工場で働いて健康被害を受けた人たちが裁判を起こせば、和解して賠償金を支払う手続きを進めています。
この救済策で国が賠償の金額を病気と診断された日ではなく、労災と認定された日を基準に決めていることに対し、兵庫県尼崎市の「クボタ」の工場に勤め肺がんになった、遠藤利美さん(80)ら2人が不当だと訴えていました。
17日の判決で、神戸地方裁判所の阿多麻子裁判長は、「損害の発生は、肺がんの確定診断を受けた日かその前提となった手術を受けた日とするのが相当だ」などと判断して、原告の主張を認めました。
そのうえで、2人にあわせて2300万円余りの賠償金と、利息に当たる遅延損害金を診断日にさかのぼって支払うよう国に命じました。
同様の司法判断は、ことし3月にも別の裁判所で示されていて、今回が2例目です。
 
【原告“被害者苦しめないで”】
原告の遠藤利美さんは「主張が認められうれしい。私のほかにも多くの人が賠償の基準日について争っているが、これ以上、被害者を苦しめないために、国は判決を真摯(しんし)に受け止め、控訴しないでほしい」と述べました。
また、原告側の谷真介弁護士は、「国は遅延損害金の起算日について原告と意見が違うと、和解をせずに裁判で争っている。被害者のなかには、自分が生きている間に和解をしたいと考えて、起算日について納得しないまま国の主張を受け入れる人も多くいる。国は今回の判決を重く受け止めてほしい」と述べました。
 
一方、厚生労働省は「今後、判決の内容を精査し、関係省庁と協議しつつ対応を検討したい」とコメントしています。

 

□アスベスト国賠訴訟 遅延損害金の起算日は『がん診断日』と認める判決 神戸地裁
https://www.mbs.jp/news/sp/kansainews/20190917/GE00029619.shtml
更新:2019/09/17 12:05

 アスベストの影響で肺がんを発症した男性2人が国を相手に損害賠償を求めた裁判で、神戸地裁は遅延損害金の起算日を「がんの診断日」と認める判決を言い渡しました。

  アスベスト被害をめぐっては、2014年に最高裁判決で国の賠償責任が確定し、国が和解案を提示していますが、賠償金の利息にあたる年5%の遅延損害金については、「労災認定された日」を基準に算出しています。

 神戸地裁に提訴していたのは兵庫県尼崎市のクボタ旧神崎工場でアスベストを使った水道管の製造を担当していた遠藤利美さん(80)など2人です。遠藤さんが労災認定されたのは肺がんと診断されてから3年後で、遠藤さんらは算定基準が「がんの診断日」ではないことに納得がいかないと訴えていました。

 9月17日の判決で神戸地裁は、請求通り国に対して慰謝料など2人合わせて約2360万円の支払いと『がん診断日からの遅延損害金』の支払いを命じました。

 「治療を続けている私たち原告には時間がありません。国は判決を真摯に受け止め、控訴しないでください。誤りを認め、誤りを改めてください。」(原告 遠藤利美さん)

 同様の訴訟では今年3月、福岡地裁小倉支部が「がん診断日から起算する」とした判決を出しましたが、国が控訴しています。
 

この記事を書いた人