重度障害者の分身ロボが働くカフェ 常設化の夢に立ちはだかる「働けるなら訪問介護打ち切り」の制度(9/24)

重度障害者の分身ロボが働くカフェ 常設化の夢に立ちはだかる「働けるなら訪問介護打ち切り」の制度
https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019092490114506.html
東京新聞 2019年9月24日 11時45分

 重い障害のある人らが分身ロボットを遠隔操作して接客するカフェの実証実験が十月、東京都千代田区で行われる。主催者が運営費などを募るクラウドファンディングは開始早々に目標金額を達成し、高い関心を集めている。しかし、重度訪問介護を巡っては、経済活動中は公的補助が受けられないという問題が実証実験だけでなく、目標とする常設化の壁となっており、関係者は早急な見直しを求めている。(北條香子)
分身ロボットを開発したオリィ研究所(東京)の企画で、昨年十一月に続き二回目。ロボットに内蔵されたカメラ映像を見て、障害者らがあごや目線でパソコンを操作。自宅や病院にいながらロボットを遠隔で動かして飲み物を運ばせたり、客と会話したりする。
難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」で声を出せない、れいわ新選組の舩後靖彦参院議員は、分身ロボットの使用を希望している。国会の動きを機に、重い障害があっても働きたい意思がある人への支援に関心が高まっている。
研究所の吉藤健太朗代表(31)は「重度障害があっても国会で働けるんだから、企業でもやれるという流れになってほしい。今回の実験に関わる企業や当事者が『うちの会社も』『自分も』と広く思ってもらえる機会になればいい」と意気込む。
吉藤代表によると、重度訪問介護を受ける人がカフェで働くことは容易ではないという。謝金を受け取らずボランティアとして働くか、働いている間は介護ヘルパーを断り、トイレや水分摂取などを我慢するか、ヘルパーの代わりに家族に介護してもらうかという対応が必要になるからだ。
前回の実証実験に参加した脊髄性筋萎縮症の二十代の女性は、カフェを訪れた企業関係者から就職の話も出たが、重度訪問介護が就業中に打ち切られる問題が妨げになり、就職できていない。このため六月に自民党の会合に分身ロボットで出席し、制度の見直しを求めた。
来年のカフェ常設化を目指す吉藤代表。「今回の実験でも困っているが、常設化ではさらに大きな問題になる。国に制度を改正してもらいたい」と訴える。
開発費やカフェの運営費を募るため、八月末にクラウドファンディングを開始。すでに目標金額三百万円を大きく上回る八百万円超が集まった。
カフェは大手門タワー・JXビルで、十月七〜二十三日まで(休業日あり)。問い合わせは運営事務局=電(0120)115598=へ。

◆メモ 「重度訪問介護」とは
重度の障害者で常時介護が必要な人に対し、ホームヘルパーが自宅を訪問し、入浴や排せつ、食事など生活全般の手伝いや外出時の移動支援といった介護をする。自己負担は最大1割で、残りは公費で賄う。ただ収入を得られる「経済活動」の間は雇用主もしくは本人が負担すべきだとの考えから、公費補助の対象外となる。7月の参院選で当選した、れいわ新選組の舩後靖彦、木村英子両氏が「介助がないと議員活動ができない」と訴え、厚生労働省が公費補助制度の見直しを検討している。
(東京新聞)
昨年行われた実証実験で、カフェ店内を移動する分身ロボット
昨年行われた実証実験で、カフェ店内を移動する分身ロボット 

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