全労連 年金問題シンポから (9/24)

全労連 年金問題シンポから
https://www.akahata-digital.press/article/article/20190924-0501
しんぶん赤旗 2019年9月24日【国民運動】

 全労連が21日、東京都内で開いた年金問題を考えるシンポジウム。パネリストや年金生活者、労組代表らが年金制度の実態を告発し、安心できる公的年金の実現を訴えました。

最低生活保障が機能不全に
鹿児島大教授 伊藤周平さん

安倍内閣の「全世代型社会保障」は、全世代・全分野で徹底した給付削減や負担増を行い、社会保障の削減をすすめるものです。経済成長の柱にも位置付け営利化・ビジネス化を進めるものです。

 年金制度も、「マクロ経済スライド」で実質引き下げが行われてきました。40年後には基礎年金の所得代替率(現役世代の手取り収入に対する年金給付の割合)が4割も下がる。老後の最低生活保障の機能を果たすことができません。マクロ経済スライドは直ちにやめるべきです。

 国民年金の未納者が増え、生活保護の高齢者も増大しており、年金の機能不全は明らかです。税方式による最低保障年金の確立が急がれます。財源は消費税でなく、所得税と法人税の累進性の強化により十分賄えます。

最低保障年金に踏み出す時
立命館大特任教授 唐鎌直義さん

国民年金の満額は6万5000円で実質的な生活保護費の半分。初めから老後の所得保障に失敗しています。最低保障機能がなく貧困な高齢者を生む構造になっています。

 受給額が保険料納付額に正比例するため年金格差が激しく、高齢者を分断する仕組みにもなっています。巨額の積立金は不要にもかかわらず、大企業の株価維持のため死守されています。

 基礎年金の国庫負担を半分にした際の国会の付帯決議では、将来的に全額国庫負担にするとされていました。今こそ最低保障年金に踏み出すべきです。

 貧困な高齢者を生活保護で救済することが重要です。そうなれば年金で給付したほうがよいとなる。最低保障年金の実現性も高まります。

憲法25条への国の責任放棄
弁護士 加藤健次さん

2013年からの年金減額が憲法25条違反と訴える訴訟と、2009年の社会保険庁民営化による職員の分限免職(解雇)撤回訴訟を担当しています。

 共通するのは、国の責任放棄です。減額訴訟では給付が高すぎるといって受給者のせいにする。分限免職では職員に責任転嫁して民営化する。究極の開き直り、責任転嫁です。

 減額訴訟で国は、年金は「健康で文化的な最低限度の生活を保障するものではない」と平気で言っています。

 社保庁は、民営化で外部委託や非正規職員を増やして情報漏れ・支給漏れを起こしている。民営化のスキーム自体を問い直すべきです。経験豊かな職員を職場に戻し必要な人員を確保することこそ必要です。

安心の制度へ ともに運動を
裁判原告ら発言

シンポでは、年金引き下げ撤回訴訟の原告の一人、堀口暁子さんが証言しました。

 「年金だけでは足りず、預金を取り崩しての生活です。着る物はほとんど買わず、旅行もなかなか行けない。持病で長期治療をしており、入院する日がくるかもと不安です」

 堀口さんは会社で賃金差別を受けてきたことが影響しています。「税金を上げたり、軍備につぎ込む政治を変えたい。みんなで立ち上がってだれもが暮らしていける年金制度をめざして頑張りましょう」と訴えました。

 全日本年金者組合の代表は、「長生きするほど、若い人ほど減る年金になっている」と指摘。マクロ経済スライドの廃止と最低保障年金の確立を求めて全労連、中央社会保障推進協議会と取り組む署名運動を呼びかけました。

 全厚生労働組合の代表は、年金機構の職場実態を紹介。「正規より非正規職員が多く、5年で雇い止めされ経験が蓄積されない。これでは年金制度を安心して運営できない。年金制度とともに運営体制もよくしていきたい」と語りました。 

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