あなたは大丈夫!? 業務時間外のメールで不眠時間が2倍に (10/8)

あなたは大丈夫!? 業務時間外のメールで不眠時間が2倍に
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NHK News 2019年10月8日 20時08分

深夜や休日などの業務時間外に受け取る仕事のメールが多いほど睡眠の質が低下し、メールが少ない日と比べて夜中に目が覚めた状態の時間が2倍に上ることが専門家の調査でわかりました。

これは働く人の健康問題に取り組む「労働安全衛生総合研究所」の久保智英 上席研究員らのグループが都内にあるIT企業で働く20代から50代までの55人を対象に行いました。

調査では腕時計型の睡眠計や、疲労度を測定するアプリを使い55人の1か月間の睡眠の状況を調べました。

それによりますと業務時間外に仕事のメールを受け取る数が多い日は「中途覚醒」と呼ばれる夜中に目が覚めてその後、眠れない状態の時間が平均でおよそ20分間ありました。

これは業務時間外のメールが少ない日と比べると2倍の長さで睡眠の質が低下したことがわかったということです。

調査にあたった久保上席研究員は、「業務時間外のメールが多いほど退社したあとも仕事の心配ごとについて繰り返し考えてしまうため睡眠の質の低下につながっている。仕事の生産性だけでなく働く人の健康被害にもつながるおそれがあり対策が必要だ」と話しています。

労働組合などによると業務時間外の深夜や休日に大量のメールが送られ、返信や対応も求められることなどから体調を崩す人がでていて中にはうつ病などの健康被害を訴え会社を辞めるケースもあります。

こうした中、業務時間外の上司からの電話やメールなどを拒否できる「つながらない権利」が注目を集めていてこれを取り入れる企業も出始めています。

つながらない権利とは
「つながらない権利」とは働く人たちが業務時間外に職場の上司や同僚からの仕事に関する電話やメール、LINEなどの連絡を拒否できるというものです。

デジタルツールの普及で会社だけでなく自宅やカフェなど場所を選ばずに仕事ができるようになりました。その一方で仕事を終えた後の深夜や休日にも業務の問い合わせや返信を求めるメールなどが送り続けられるケースも多くなっています。

このため仕事から頭が離れず心が休まる時間もないとして「仕事をしているのか休んでいるのかわからない」という声も出ています。

労働組合などを取材するとこうした業務時間外のメールや電話が原因とみられるうつ病などの健康被害を訴える人が相次いでいて、その数は増加傾向にあるということです。

こうした中で「つながらない権利」を取り入れた企業も出始めています。

東京都内にある従業員40人余りのIT企業では去年から業務時間外は社内、取引先を問わず、メールや電話などで連絡を取り合うことを禁止しました。その結果、従業員のやる気向上につながり、売り上げは4割増えたということです。
時間外連絡が週1回以上 15%
業務時間外に職場の上司からの緊急性のない電話やメールに週1回以上対応していると回答した人がおよそ15%に上ることが大手コンサルティング会社の調査で分かりました。

この調査は「NTTデータ経営研究所」がことし5月、正社員として働く20歳以上の1110人を対象にインターネットを通じて行いました。

それによりますと業務時間外の深夜や休日などに職場の上司からの緊急性のない電話やメールに週1回以上対応していると回答したのは165人、率にして14.9%に上りました。

このうちほぼ毎日のように業務時間外のメールなどに対応していると回答したのは62人、5.6%でした。

さらに自分が働いている会社が働き方改革に取り組んでいるかを尋ねたところ、上司から週に1回以上時間外に連絡があると回答した人では68.5%が取り組んでいると答えました。

一方で時間外の連絡があまりない人では勤務先が働き方改革に取り組んでいると答えたのは45.9%でした。

働き方改革で職場にいる業務時間は減っても退社したあとも自宅などで仕事の電話やメールを受け続ける社員は多いとみられています。

NTTデータ経営研究所の加藤真由美シニアマネージャーは「深夜や休日に職場からの電話やメールなどの対応に追われ、働く人たちの新たな負担となっている。働き方改革を進めるためにも職場でのルール作りが求められている」と話しています。
時間外のメールは違法?
夜間や休日などの業務時間外に仕事に関するメールを送り続けることは法律に違反するのでしょうか。

厚生労働省はおととし、労働時間の適正把握のためのガイドラインを策定しました。この中で労働時間の考え方について、「使用者の指揮命令下に置かれている時間」と定めています。

労働時間にあたるかどうかは会社側の指揮命令下に置かれたと評価できるか客観的に判断されるとされています。

メールを受け取るだけでなく、メールによってすぐに仕事に取りかかるよう指示を受けたか、実際に業務を行ったかなど、それぞれのメールの中身によって判断されるということです。

その結果、労働時間にあたると判断されれば企業がその分の賃金を支払わなくてはなりません。

厚生労働省によりますと業務時間外に仕事に関するメールを送り続けること自体はそれだけでは法律に違反するとはいえないということです。

しかし、深夜や休日に業務を指示するメールを繰り返し送り、受け取った側が実際に仕事をした場合には労働時間とみなされその結果、長時間労働となり、労使協定に違反するなどした場合は法律違反になるということです。

業務時間外にメールを送り続けることについて、今の法律では明確な規定はなく個別に判断するしかないとしています。

厚生労働省は時間外の業務メールについては働く人たちへの影響を懸念しています。去年、作られたテレワークを導入する企業向けのガイドラインでは、長時間労働対策として時間外や、休日、深夜のメール送付の抑制や、外部の端末から会社のシステムへアクセスできない設定にするなどの仕組みを整えるよう求めています。

しかし、実際の運用は企業に委ねられていて労働者を健康被害から守るため、どうルール化していくのかが課題となっています 

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