日本郵便、退職者にも手当返納請求 保険途中解約の場合の「規定」適用 (10/11)

日本郵便、退職者にも手当返納請求 保険途中解約の場合の「規定」適用
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2019/10/11(金) 10:29配信

九州の元郵便局員に届いた手当金の返納請求書

 「毎月のように手当金の返納を求められる。なぜ辞めた後も支払わないといけないのか」。かんぽ生命保険の不正販売問題が発覚して以降、西日本新聞には、保険営業を担当していた元郵便局員からの苦情が多数寄せられている。保険が途中解約された場合、担当者に支給された手当金は返納しなければならないとの就業規則が根拠になっているが、退職者に適用することに問題はないのだろうか。

【写真】「実績ゼロで定時退庁ですか?」郵便局宛てに送られたメール

 「ゆうちょ銀行又は郵便局で期限までにお支払い願います」

 数カ月前に退職した九州の男性の元に9月、日本郵便から数万円の返納を求める請求書が届いた。明細には解約された保険の種類や証券番号が記載されていたが、どの顧客が、どんな理由で解約したかの説明は一切なかった。

 現職時代は顧客のアフターフォローにも力を入れ、途中解約されたことはほとんどなかった。「不正販売問題で郵便局に対する信頼がなくなり、解約が急増しただけではないか。私個人に返納を求めるのは到底納得できない」と憤る。
上司から営業ノルマについて厳しく叱責(しっせき)され、精神的に追い詰められて退職したという中国地方の元女性局員も「請求書が届くたびに当時のパワハラを思い出す。嫌がらせとしか思えない」と話す。

 日本郵便には契約から6カ月未満の解約は全額、2年未満なら一部、手当金を返納するという就業規則があり、退職者にも適用される。短期間に乗り換えを繰り返す悪質な契約を防ぐため、今年4月からは返納を求める期間を3年に延長した。

 規則を退職者にも適用する理由について、同社は「営業手当は、解約などにより契約期間が短くなれば、その期間に応じて返納になるという『条件付き支払い』といった性格のもので、その考え方を就業規則にも定めている」と説明する。
契約から一定期間を経て手当金が支給されるケースもあり、こうした場合は担当者が退職していても支給手続きを取るという。

 ただ複数の関係者によると、一部の局員が営業実績を稼ぐ目的で、退職者が担当していた顧客を狙い、新しい保険に乗り換えさせる悪質な事例が起きているという。
別の元局員はかつての顧客から「引き継ぎ名目で来た局員が『あの人は問題を起こして辞めた。すぐに解約した方がいい』と言っていた」と打ち明けられた。日本郵便側に抗議したところ、その後は返納請求は届かなくなったという。

 労働問題に詳しい光永享央弁護士は「原則、就業規則の効力は退職後には及ばないが、条件付きで手当金が支給されているのならば、返納を求めることに一定の合理性はある」と前置きした上で「解約の経緯を考慮せず、一律に返納を求めるのは乱暴ではないか」と指摘する。 (宮崎拓朗)

西日本新聞社
 

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