働き方改革で本県の産科の現場に危機感 (10/31)

働き方改革で本県の産科の現場に危機感
http://www.mutusinpou.co.jp/news/2019/10/57458.html
陸奥新報 ニュース2019/10/31 木曜日

 働き方改革の波が、県内の医療現場にも及ぼうとしている。2024年度から医師へ適用される時間外労働の罰則付き上限規制により、県内で分娩(ぶんべん)が可能な総合病院は三つにまで減少する―。そんな試算がある。安心・安全に子どもを産むための医療を提供し続けられるのか。「スタートまであと5年もない」。現場の危機感は大きい。

 24時間、時間を選ばずに始まるお産に対応する産婦人科医。県内では134人のうち実際にお産に携わる医師は半数程度。その数は不足しており、過去には医師1人当たりの取り扱い分娩数が全国1位だったこともある。

 各病院への医師派遣機能を持つ弘前大学大学院医学研究科産科婦人科学講座の横山良仁教授(56)の試算(育休、産休などによる当直免除の医師数も考慮)では、国の現行案である一般勤務医の時間外労働の上限・年960時間を当てはめると、1医療機関当たり14人の医師が必要となり、現在県内で分娩を扱う11の病院(クリニックは除く)は、医師集約により3病院にまで減少する。このデータは、9月15日、働き方改革への対応に向け新潟市で開かれた、日本産科婦人科学会の「拡大サステイナブル産婦人科医療体制確立委員会」でも発表されている。

 本県は各医療圏が広く、特に冬季の交通面は、雪による通行止めなど非常にシビア。「このままでは子どもを産みたいと思う人がいなくなってしまう」と横山教授は危機感を募らせ、「東京など医者が多いところと同じ基準は地方には当てはまらない。職業の特殊性、地方の特殊性を無視した国の方針であり、県民の皆さんが注視していかなければならない問題。どうしていくべきかみんなで知恵を出し合わなければならない」と警鐘を鳴らしている。
 

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