「解雇の不安が消えない生活だった だから合格した責任は重い」宝塚市・合格者が会見 (11/25)

「解雇の不安が消えない生活だった だから合格した責任は重い」宝塚市・合格者が会見
https://mainichi.jp/articles/20191125/k00/00m/040/338000c
毎日新聞2019年11月25日 21時00分(最終更新 11月25日 21時20分)

就職氷河期世代を対象に兵庫県宝塚市が実施した採用試験に合格し、思いを語る3人=同市東洋町の市役所で2019年11月25日午後2時8分、土居和弘撮影
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兵庫県宝塚市がバブル経済崩壊後の就職難を経験した「就職氷河期世代」を対象に実施した採用試験に合格し、来年1月から働く4人のうち3人が25日、市役所で記者会見した。現在、中国地方に住む女性(40)は非正規などで六つの職場に勤め、解雇も経験したといい「いつ解雇を通知されるかとおびえてきた。市民の声に十分に耳を傾け、頼られる存在になりたい」と抱負を語った。

 女性は大学在学中にIT会社への就職が内定したが、入社約2カ月前に取り消された。これまでの職場のうち、三つは派遣や有期契約での非正規雇用だった。「働き先を選ぶ余裕はなかった」。職場環境が悪くて離職率の高い会社や、いきなり給与を減額するような会社にも勤務した。うち1社からは明確な理由を示されずに解雇された。今は小規模な会社の正社員だが、解雇への不安は消えなかったという。

 宝塚市の職員募集を知った時、昨年7月の西日本豪雨の時のことを思い出した。両親らと同居する自宅に被害はなかったが、浸水被害に遭った知人たちは、住む自治体によって職員の対応が違うことに戸惑っていた。そうした市民の声を丁寧に聞き、支援していきたいと市職員を目指すことを決意した。

 採用試験の倍率は約400倍。面接試験の待ち時間に話した他の受験者もみなよく似た境遇だった。「だから、合格した責任は重い。市民と真摯(しんし)に向き合って仕事をしたい」と語った。

 この女性とともに会見した神戸市在住の男性(44)はアルバイトを含めて七つの職場に勤め、現在は非常勤の公務員。宝塚市在住の女性(45)は無職で、2人の子どもを持つシングルマザーという。中川智子市長は「苦労をしたからこそ、市民に寄り添う仕事に生かせることが多いと期待している」と話している。【土居和弘、近藤諭】
 

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