韓国の外国人労働者、辛酸 日本より先に門戸、問題点浮き彫り (12/2)

韓国の外国人労働者、辛酸 日本より先に門戸、問題点浮き彫り
https://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2019120202000229.html
中日新聞 2019年12月2日 夕刊

〔写真〕不法滞在のまま職探しを続けるバワン・ライさん(右)=ソウルの移住労働者労働組合で

 日本より先に外国人労働者へ門戸を開いてきた韓国で、制度改善を求める声が強まっている。就労ビザで働く韓国の外国人労働者は昨年六月時点で約百二万人と、十年前の二倍近くに増加。最も多い在留資格は、二〇〇四年にそれまでの「産業技術研修生制度」に代えて導入した「一般雇用許可制」。約二十八万人が就労するこの制度は、悪質ブローカーの排除に効果がある一方で、転職の自由がなく雇用主に有利なため、過酷な労働や不法滞在などが依然として深刻だ。

 「転職の自由を認めろ。政府は外国人を経済の道具として使い捨てにするな」。十月下旬、ソウルで外国人数百人のデモがあった。彼らは雇用許可制で働く労働者たち。外国人労働者を支援する移住労働者労働組合のウダヤ・ライ委員長は「業種も職場も選べない。雇用主の力が圧倒的に強く、労働者は言いなりになるしかない」と制度の問題点を指摘する。

 中西部・忠清南道(チュンチョンナムド)の牧場で働くネパール人のバワン・ライさん(22)は九月、同組合に助けを求めた。「仕事場を追い出されて行くところがない。戻りたいが、話を聞いてくれない」

 二年前に韓国に渡り、イチゴ農場、養豚場と二カ所の牧場で働いてきた。仕事は朝六時から十時間ほど。休みは月に二日だけで、一日も休めない月もあった。月給は百三十万ウォン(約十二万円)程度。仕送りと食費を除くと手元には十五万ウォンほどしか残らない。

 仕事はきつく、言葉も十分に理解できない。同僚の韓国人からは仕事を押し付けられ、暴言も浴びせられた。職場はどこも長続きしなかった。

 労働者の都合による職場の変更は三度しか認められず、その制限を超えると、在留期間が残っていても帰国しなければならない。バワンさんは最後の職場となった牧場で、仕事の疲れから数回寝坊し、解雇を言い渡された。雇用主に「もっと一生懸命働く。仕事を続けたい」と訴えても聞き入れてもらえなかった。「ネパールに戻っても韓国ほど稼げる仕事はない」。ビザが失効したまま、職探しを続けている。

 労働力不足を補うために始まった雇用許可制では、雇用先が建設業や農漁業など韓国人が働きたがらない業種に限られ、入国前に韓国語の能力によって業種が決まる。滞在期間の延長はできるものの、雇用主の同意を必要とするなど労働者に不利な条件が並ぶ。

 制度を運用する雇用労働省の担当者は「雇用主も手数料を払って雇っている。仕事が気に入らないからといって簡単に辞められては困る。転職も三回まで認めており、十分だと考える」と主張する。

 韓国では一九九〇年代にも外国人向けの産業技術研修生制度があったが、民間ブローカーが介在し、過酷な労働や給料未払いなどが頻発。国が一括して管理する雇用許可制へ移行し、ある程度改善された。ただ、製造業など一定規模の事業所では好待遇を受ける労働者はいるものの、低賃金や劣悪な労働環境の訴えは後を絶たない。

◆「特定技能」219人のみ9月末時点
日本では、発展途上国への技能移転を名目とした「外国人技能実習制度」が1993年に始まり、昨年末時点で32万8000人余がこの制度で就労している。事実上、単純労働分野も含めた受け入れ窓口として機能してきたが、劣悪な労働環境や来日前に多額の借金を背負わされるケースなどが問題化している。

 国内での深刻な人手不足も重なって、政府は入管難民法を改正して今年4月に新たな在留資格「特定技能」を導入。5年間で最大34万人余を新たに受け入れる方針を明らかにしているが、スタート半年となる9月末時点での受け入れは219人にとどまっている。

 (ソウル・中村彰宏、写真も)
 

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