もう時代遅れ? 日本型雇用システム
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NHK News 2020年1月21日 17時58分
経団連は春闘に向けて、戦後、長く続いてきた日本型雇用システムを見直すよう促しました。新卒一括採用、終身雇用、年功型賃金…もう時代に合わないのでしょうか?
日本型雇用システムとは
日本型雇用システムは、新卒一括採用、終身雇用、年功型賃金を主な特徴としています。皆が同じ時期に就職し、年を重ねるに従って同じように昇進し、そして同じ会社で定年まで勤めあげる。こうした雇用システムを日本の多くの企業が導入し、高度成長期に定着しました。
メリット
日本型雇用システムは、経済が右肩上がりで大量生産で安くていいものを作れば売れていた時代に適した制度でした。
例えば、新卒一括採用は、企業にとっては毎年、計画的に採用を行うことができ、採用後も異動や転勤などを通じてさまざまな仕事を経験させて、自社にあった社員を育成することができます。
社員にとっても、年齢や勤続年数が上がるにつれて給料もあがる年功序列型の賃金は、雇用や経済面での安心感につながり、人生設計を描きやすいというメリットがありました。
デメリットも
しかし、経済がグローバル化し、海外の企業との競争が激しさを増すようになると、日本型雇用のデメリットが指摘されるようになりました。
例えば、同じ企業の中の訓練や経験だけで育った社員は、創造的な仕事が不得意だったり、海外の優秀な人材の獲得が難しくなったりするばかりでなく、勤続年数を重視した昇給の制度では出産や育児が女性のキャリア形成に不利に働いてしまう、というのです。
専門家「日本型雇用システムでは限界がきている」
労働問題に詳しい三菱総合研究所の山藤昌志主席研究員は「少子高齢化で若い人材の獲得が難しくなり、AI=人工知能の発達など技術の進歩が進めば、仕事の内容も大きく変化する」としたうえで、「こうした課題に対応するには企業が人材を抱えていちから育てる今の日本型雇用システムでは限界がきている」と指摘しています。そのうえで、「この10年は日本経済にとって正念場になる。そういった中で日本型雇用システムも大きく変わらざるをえないだろう」と話しています。
経団連のねらい
企業活動のグローバル化が進み、国境を越えた人材の獲得競争が激しさを増す中、経団連は日本型雇用システムのままでは意欲のある優秀な人材や海外の人材に対して、企業としての魅力を十分に示すことができないと考えています。
そして、人材獲得が難しくなるばかりか、みずから能力を磨いて付加価値の高い仕事をしようという若い人材の成長と活躍を阻害している可能性もあると指摘しています。
見直しの方向性
では経団連は、日本型雇用をどう見直そうとしているのでしょうか。
まず採用については、従来の新卒一括採用だけでなく中途や経験者の採用、さらに通年採用などを積極的に組み合わせる必要があるとしています。
賃金の面では、年齢や勤続年数に応じて自動的に上がる仕組みから、仕事の成果に対する評価で昇給や昇進のスピードが変わる要素を増やすことが望ましいとしています。
こうした見直しによって、国籍や性別、学歴などにかかわらず多様な人材の採用と活躍が期待できるとしています。
すでに広がる見直しの動き
新卒の一括採用や横並びの賃金制度を見直そうという動きは、すでに大手企業の間でも広がり始めています。
富士通は今年度、これまでの年功序列の賃金制度を抜本的に見直し、役割に応じて給与を大きく上積みする制度を導入する予定です。AI=人工知能などの先端分野で人材の獲得競争が激しくなっているためで、勤続年数にかかわらず、3000万円から4000万円の年収を得られることもあるとしています。
また三菱商事は、今年度から入社10年目以降は、年齢と関係なく、能力に応じて子会社の経営陣などに就けるよう人事制度を見直しました。年功序列の要素を少なくし、年齢に関係なく優秀な人材を確保するねらいです。新卒一括採用を見直す動きも出ています。
KDDIは、2021年度に入社する社員から、これまでの一括採用をやめ、全面的に通年採用に切り替え、入社の時期も4月と10月の年2回に、変更するということです。会社では、通年採用への切り替えによって一括採用では対応しきれない幅広い人材の確保につなげたいとしています。
通年採用は、ソフトバンクもすでに導入しています。