中西 要 トヨタ・ショック? ふざけるな

 トヨタ自動車は、2008年12月22日、当期の営業損益が1500億円の赤字になる見通しであると発表した。昨年まではホテルで実施していた記者会見も、今年は経費削減のため自社オフィス内で実施したという。会見には内外の多数のメディアが集まったという。翌日の朝日新聞朝刊は1面トップで「トヨタ通期赤字転落」と報じ、マスコミ各社も「トヨタ・ショック」だと煽り立てた。
 「トヨタ・ショック」だと? 私は「ふざけるな!」と言いたい。日本社会をここまで破壊・蹂躙したのはトヨタをはじめとする大企業、お前らだろ!。
 「アメリカ発の未曾有の危機」だと?ふざけるな!こんな社会にしたのはお前らだろ!
 
 トヨタは、創業以来、2008年3月期決算まで、毎年毎年、莫大な利益を積み上げてきた。
 トヨタが取締役・監査役に支払った役員報酬・役員賞与は、2007年3月時には総額33億5000万円、2008年3月時には総額39億2000万円であった。役員一人あたり1億2200万円である。
 さらに、2007年度の株主配当は総額4432億円、2008年もすでに2037億円の中間配当が実施されている。
 これら巨額の役員報酬・株主配当を行ったうえでもなお内部留保は、2008年3月時点で13兆9000億円である。13兆9000億円という数字は、毎年毎年1500億円の赤字を出し続けてもこの先86年間は内部留保だけで食いつないでいける計算である。
 
 トヨタは、2008年度の役員賞与(ボーナス)をゼロにする方針だと記者発表したが、当期赤字を出している以上、そんなことはまったくもって当たり前のこと。わざわざ記者発表するほどのことでもない。しかも当期赤字であるにもかかわらず、株主配当については現時点では昨年実績(1株あたり140円)を維持するとしている。
 ふざけるな!
 トヨタの役員連中は、ストックオプションで自社株式を大量に取得している。役員賞与がゼロになっても、巨額の株主配当を受け取るわけである。
 ふざけるな!
 
 日本社会全体を新自由主義イデオロギーによって破壊し蹂躙し尽くしてきたのは、2002年5月から2006年5月まで日本経団連の会長であり、2001年から2006年まで政府の経済財政諮問会議の委員であり、2008年10月まで内閣特別顧問であった奥田碩・トヨタ相談役、その人物である。
 奥田が日本経団連会長であり、政府の経済財政諮問会議委員であった2003年には、労働者派遣法が「改正」され、製造業でも派遣が解禁された。結果として、トヨタの工場、トヨタの下請・孫請・関連の工場で、一挙に派遣労働者が広がった。その結果として、トヨタは2007年まで、毎年毎年、史上空前の利益を更新し続けたのである。
 
 最後に問題。
 トヨタ自動車は年間に消費税をいくら納めているでしょうか?
 
 答えは、「ゼロ」です。
 それどころか、トヨタは、年間2000億円以上の消費税の「還付」を受けています。
 私たちが苦しい家計の中から納税した消費税が毎年2000億円以上もトヨタに「還付」されているのです。「仕入税額控除」という税制のからくりです。
 
 私たちの暮らすこの日本社会は、なんとトヨタに優しいことであろうか!
 昨年は1年で2兆円以上の利益を上げていたトヨタが今期は1500億円の赤字になるという。それがどうした?ふざけるな!こんな日本社会にした責任をどうしてくれるのか!
 2009年度の日本の一般会計歳出は51兆円になる見込み。トヨタの内部留保13兆9000億円。国の一般会計歳出の4分の1を超えているわけである。
 この数年間にトヨタが溜め込んできた内部留保を全部吐き出させて、それをトヨタの役員連中を除いた全国民に平等に分配したら、日本の景気はどれだけ良くなることであろう。

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