東京社説 東京社説 生活保護 頼みの命綱がやせ細る

 東京新聞 2013年1月21日

 生活保護費がカットされそうだ。そうなればギリギリの生活を続ける受給者だけでなく、自力で踏ん張る生活困窮世帯も追い詰めかねない。子育て世帯への影響も心配になる。慎重に対応すべきだ。
 
生活保護世帯の保護費が適切かどうか厚生労働省が検証した。保護費のうち食費や光熱費などの生活費(生活扶助費)について、年収が百二十万円以下の一般の低所得世帯の消費支出と比べた。
 
子どものいる夫婦の世帯や母子世帯では保護世帯の方が多かった。逆に高齢者世帯は少なかった。
 
実際の保護費の基準額は新年度予算の編成時に決まる。だが、自民党は総選挙で基準額の一割カットを掲げた。さっそく田村憲久厚労相は引き下げを表明した。慎重だった公明党も容認する考えだ。

本来、生活保護の目的は憲法の「健康で文化的な最低限度の生活」を守るためである。所得の低い方に合わせるのではなく、憲法が求める生活の実現を目指すべきだ。
 
ただ、保護に頼らず生きる人が働く意欲を失わない配慮は要る。見直しはやむを得ない面はある。
 
心配なのは子育て世帯だ。保護費のカットで就学の機会が減る懸念がある。低所得世帯で育った子どもは就学機会が限定され、将来安定した仕事に就けず困窮したままになる「貧困の連鎖」が問題だが、それを断ち切れなくなる。

 保護世帯以外の低所得世帯にも影響が及ぶ。子どもの学用品代などを支給する就学援助や地方税の非課税措置の対象世帯、最低賃金などは基準額を参考に決まる。基準額が下がればこうした制度の対象から外れる世帯が出る。
 
検証した厚労省の有識者会議の委員からも子育て世帯へ配慮を求める声が出た。受給の状況も地域や家族構成、年齢などで個々に違う。政府・与党は引き下げありきではなく、受給者の現状を見極めて慎重に検討する必要がある。
 
生活保護の制度改革も検討されている。不正受給防止を目的に、自治体の調査権限を強めたり、親族に扶養を断る理由を説明する責任を課すことが打ち出された。不正受給は防ぐべきだが、これでは保護を受けにくくし、本当に必要な人を締め出してしまう。
 
生活に困窮する人を幅広く対象にした自立支援策も検討されているが、実施には課題が多く時間もかかる。支援策を口実に保護の門を狭めるだけだとしたら問題である。生活保護は困窮者の「命綱」だ。弱者切り捨ては許されない。

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