2013年4月23日 日本労働弁護団 会長 鵜飼 良昭
政府の経済財政諮問会議、産業競争力会議や規制改革会議は、持続的な成長を実現するために労働市場改革、雇用制度改革が必要不可欠と述べ、雇用流動化実現のための議論を急速に進めている。それらの議論の中には、解雇の金銭解決制度や労働時間規制緩和といった労働規制緩和政策に関する議論も多く含まれている。かつて第1次安倍内閣の時に市民の猛反対にあって葬り去られた労働規制緩和政策を財界の要求に応じて、またもや懲りずに議論の俎上に載せてきたものである。日本労働弁護団は、市民の多くを占める労働者及びその家族の雇用と暮らしを破壊する労働規制緩和に強く反対するとともに、人間らしい生活と労働条件が実現できる政策の確立・法規の徹底を求める意見を表明するものである。
1 解雇規制緩和と金銭解決制度について
(1)政府の規制改革会議は、2013年2月15日の第2回会議において、同会議における検討課題を提示し、雇用問題を含む4分野について、それぞれワーキング・グループ(WG)において検討課題を議論することを決定した。そして、同月25日の第3回会議では、雇用WGでの検討項目として、働きやすい労働環境の整備や労働条件の変更規制の合理化とともに、「労使双方が納得する解雇規制の在り方」として、「解雇に係る規制を明確化するとともに、解雇が無効であった場合における救済の多様化により、使用者及び労働者の双方が納得するルールの下で仕事ができるよう労働環境の整備を行うべきではないか」との検討項目が記されている。その上で、雇用WGの座長である鶴光太郎氏は、「雇用改革の『3本の矢』(試案)−人を動かすために」の中で雇用の流動化を強調し、判例に基づく解雇権濫用法理による解雇ルールについて、「解雇補償金制度」の創設を挙げる。また、第4回会議では、「勤務地や職務が限定された労働者の雇用に係るルールを整備することにより、多様で柔軟な働き方の充実を図るべきではないか。」との項目が雇用WGの優先検討事項の一つとされ、雇用WGで議論が開始されている。
(2)政府の産業競争力会議でもまた、人材力強化・雇用制度改革のテーマ別会合の主査である長谷川閑史氏らが、重点施策の一つとして、「雇用維持型の解雇ルールを世界標準の労働移動型ルールに転換するため、再就職支援金、最終的な金銭解決を含め、解雇の手続きを労働契約法で明確に規定する」とし、再就職支援金の支払いとセットでの解雇などを含め、合理的な解雇ルールを明文で規定、民法627条の解雇自由の原則を労働契約法にも明記し、判例に基づく解雇権濫用法理による解雇ルールを見直すなどと述べている。
(3)しかしながら、日本の解雇ルールが「厳格」であり「世界標準の雇用移動型」でなく「雇用維持型」であるため、企業の経営判断や労働力移動の大きな阻害要因となっているとの議論自体が、その前提を誤っておりまた実態を全く踏まえていない。
日本の解雇ルールは、戦後の労働法制では解雇予告手続しかなく一般的な解雇規制がなかったため、裁判所で半世紀を経て形成・蓄積されてきた判例法理がその前身となっている。この判例法理が2003年になって立法化されたのは、グローバル化に伴い透明で公正な法による支配の重要性が指摘されたからであり、2000年代に入り国家的事業として行われた司法制度改革や労働分野における個別労働紛争解決制度、労働審判制度の創設、労働契約法制定等もその一環である。他方、国際的な解雇ルールを見ると、1982年には解雇に正当な理由を必要とする等のルールを定めた「使用者の発意による雇用の終了に関する」ILO第158号条約及び第166号勧告が採択され、ヨーロッパ諸国や韓国等でも同様のルールが法制化されており、これが世界標準となっている。従って日本の解雇ルールは、世界から数十年も遅れて法制化されただけでなく、その内容も解雇に、世界標準から見て当然の、合理的理由と相当性を求めているに過ぎず、これを「厳格」とか「雇用維持型」とか評するのは全くの的はずれでしかない。現に雇用保護の強さを国際的に比較する指標であるOECDの雇用保護指標(2008年発表)を見ても、日本の雇用保護指標はOECD平均を下回っており、国際的にも雇用保護が相対的に弱い国とされているのである。なお産業競争力会議では、「判例に基づく解雇権濫用による解雇ルールを見直す」等とし、同会議のメンバーである竹中平蔵氏は三木谷浩史氏との文藝春秋4月号の対談で、「(日本の)正社員は世界で最も守られていますが、これは、1979年に東京高裁が出した特異な判例があるためです」と述べている。しかしこの判決(東洋酸素事件東京高判昭54・10・29労民30巻5号1002頁)は、不採算部門を廃止するに当たり同部門の労働者47名全員を整理解雇の対象とした事案について、これを合理的な経営判断として是認し解雇を有効としたものであり、この判決が何故に経営判断を不当に拘束しているというのか理解不能である。解雇ルールは、社会の要に位置する最も重要なルールであるから、正確な事実認識に基づく慎重な議論と国民への丁重な説明が必要であることを特に指摘しておきたい。
このように10年前に法制化された日本の解雇ルールであるが、特に中小企業の職場では殆ど守られておらず、多くの労働者が裁判を利用できず泣き寝入りとなっているのが実態である。増加を続ける労働相談の中でも最も多いのが解雇に関する相談であるが、妊娠をしたから解雇とか、協調性や能力がないから解雇とか、社長が気に入らないから解雇とか、理由の説明もない解雇など恣意的、理不尽な解雇が後を絶たない。平成22年度の都道府県労働局の民事上の個別労働紛争相談件数は24万件を超え、そのうち解雇に関するものが21.1%を占め最も多いが、あっせん申請まで行ったのは2400件弱に過ぎない。しかし労働局のあっせんは任意の手続きであり参加を強制できないので、事案の4割は会社側不参加で終了しており、解決に至るのは全体の3割でしかないのである(以上の実情は濱口桂一郎「日本の雇用終了」参照)。肝心の裁判については、2006年に労働審判制度がスタートしたことにより、以前に比べて裁判所を利用しやすくなったものの、それでも年間の労働裁判件数は7000件台に止まっており、日本より労働者数が少ない英独仏等の年間数十万件とは桁違いに少ない状態にある。このように、日本の解雇ルールは、法律の上で存在しながらも十分に機能していないというのが実態であり、むしろ法の支配の観点からは、泣き寝入りを防ぎもっと裁判を利用できるような制度改革やインフラ整備こそが求められているといえよう。
このように、ただでさえ解雇ルールが守られていない中で解雇の規制緩和を行えば、底が抜けたように理不尽な解雇が横行することは必至である。解雇の金銭解決制度を始めとした解雇ルールの規制緩和は、半世紀に及ぶ時代の変化を背景として、労使の非対等性を踏まえた利益考量の下で形成発展してきた判例の解雇権濫用法理、そして、これを労働契約法に成文化して解雇権の濫用から労働者を保護するとしてきたこれまでの解雇ルールの発展の経緯を無視するものであり、法の支配に反し時代に逆行するものであって、断じて許されてはならない。
(4)規制改革会議は、日本の正社員は無限定正社員であり、配転命令や残業命令に無限定に応じる代わりに雇用保障がなされている、これをいかに限定化し、多様な雇用形態を作ることが正社員改革の第一歩であるとして、勤務地や職務が限定された労働者について雇用に係るルールを整備して、その労働者の職務が無くなれば配転可能性の有無を問わずに解雇できるような解雇の容易化を図ろうとしている。
しかしながら、前提として、日本の正社員について、配転命令や残業命令に無限定に応じることと雇用保障をバーターとすること自体が誤っている。育児や介護等の家庭の事情などに応じて使用者の配転命令権は制限されるべきであるし、労基法上法定労働時間の定めがあり、時間外労働も本来は36協定によって時間外労働を命じることができる場合は厳格に限られている。規制改革会議の述べるところは、日本の無限定正社員はワーク・ライフ・バランスを放棄する代わりに雇用保障が与えられると述べているのと同じであるが、ワーク・ライフ・バランスと雇用保障は両立すべきものであり、正社員だから配転命令や残業命令に無限定に応じなければならないなどという考え自体が誤っている。
他方で、職務限定労働者といっても、現実には、労使の非対等性から労働者が限定された職務以外の職務や残業を強いられているのが現在の実情である。よって、労基法を始めとする労働関係法規の遵守に劣る我が国において、職務限定労働者にかかる雇用のルールを整備するといって解雇の容易化を許容すれば、労働者は使用者に好きに使われた挙げ句に雇用保障もままならない事態を招くことになる。
職務限定労働者に当初予定されていた職務が無くなったとしても、他の地域、他の職務に配転可能性があれば、使用者としてはまずはこれを検討すべきであり、これは今までに培われてきた解雇に関する判例法理でも同様である。今までの判例法理に悖るような職務限定労働者の雇用に関するルールを緩和することは到底容認できない。
(5)また、解雇が無効であった場合に労働者の意思に反しても使用者の意思によって労働契約関係を解消できる金銭解決制度については、当弁護団が今までに再三述べてきたとおり、「金で解雇を買う制度」であり、このような制度が導入されれば、解雇権濫用法理を立法化した労働契約法の規範性を著しく弱め、解雇規制の空洞化をもたらすものである。
ましてや、解雇の理由や有効無効を問わずに、使用者が金銭を支払えば解雇できるような「再就職支援金の支払いとセットでの解雇」は、(多少の金を支払えば)使用者の恣意的な解雇権行使そのものを合法化するものであり、もはや労働者の誰の賛同も得られないことは明らかである。
(6)政府の有識者会議は、雇用の流動化実現のために解雇規制のルールを整備する必要があるとして解雇規制緩和や金銭解決制度を位置づける。しかしながら、そもそも成長産業なるものが存在しなければ、解雇規制緩和は、我が国に恣意的な解雇権の乱発による大量の失業者をもたらすだけである。他方で、魅力ある成長産業が存在するのであれば、職業訓練制度、仕事と家庭の両立を可能とするための政策、若者の働きやすい環境づくり等の積極的な施策を充実させれば、解雇規制緩和なくとも労働者は自発的に成長産業の職に就く。結局、解雇規制緩和がもたらすものは、失業者の増大と、使用者の恣意的な解雇によって生活の糧たる賃金収入が絶たれ生活を破壊されることに怯える労働者が使用者に対し物も言えない社会である。その結果、労使の非対等性が促進され、労基法を始めとする労働関係法の規範性は脆弱なものとなり、労働者の労働条件や労働環境も劣化していくばかりとなる。市民の多数が労働者とその家族であることからすれば、失業者の増大と雇用や労働条件の劣化は消費の停滞を推し進め、治安の悪化を招き、我が国社会経済の発展どころか後退と衰退を招く結果となる。
解雇の金銭解決制度を始めとした解雇規制緩和は断じて行われてはならない。
(7)そして、「解雇規制緩和」反対論は労働側だけではなく、かつての日経連(日本経営者団体連盟。2002年に経団連と統合し、現在の日本経団連となる。)の意見でもあった。即ち、当時の日経連の奥田会長は、「日本社会は失業に対して脆弱な構造にあるのではないか。こうした構造を労働市場の機能強化などを通じて失業に強い構造に変えていくことができるという意見には、大きな疑問がある。不良債権の最終処理では、離職者がなるべく少なくなる方法を採用するとともに、仮に過剰感があっても雇用に手をつけるのは最後の手段だという共通認識の下で、それを回避するために労使で最大限の努力を行わなければならない。懸念するのは便乗するような形での解雇が連鎖的に発生することだ。万一、経営者のモラルハザードが広がれば、便乗解雇が横行し、社会全体が崩壊しかねないと心配している。今、一部の論者からは解雇規制の緩和を求める声が出ているが、これは最もやってはいけないことだ。便乗解雇を容易にするとともに、何より経営者のモラルハザードに直結しかねない。」と述べ(週刊労働ニュース2001年8月6日号)、当時の日経連の福島道生専務理事も、「解雇を緩和する法制の立法化にも賛成しない」との見解を示している(週刊労働ニュース2001年7月23日号)。現在、政府の有識者会議で議論されている解雇規制緩和は、このような財界の健全な考え方をも覆すものである(高島屋の鈴木弘治社長は、2013年4月14日の日経新聞で、今回の解雇規制の緩和について「正社員は保護されすぎていて、解雇のルールづくりが必要との議論もあるが、反対だ。正社員が解雇されやすくなると、社会全体が不安定になってしまう。消費は短期的には経済環境、景気に左右されるが、中長期的には社会の安定が不可欠だ。」と述べている)。
2 労働時間規制緩和について
(1)規制改革会議が第3回会議で示した4WGにおける検討項目(案)では、「働きやすい労働環境の整備」として、「女性、高齢者、若者等の労働力率を高めるため、企画業務型裁量労働制の見直し、フレックスタイム制の見直し等を図ることにより、ワーク・ライフ・バランス等に配慮した労働時間規制とすべきではないか。」と記されている。
また、産業競争力会議における人材力強化・雇用制度改革の主査長谷川氏の資料には、「多様な働き方を差別なく認める」として、「裁量労働時間制から新たに自己管理型の業務や在宅勤務等働き方に応じて総労働時間規制等を緩和すると同時に、導入が容易な制度へ移行」、「裁量労働対象者の総労働時間規制(深夜・休日残業の割増賃金および36協定に基づく総労働時間の上限)の適用除外化」が掲げられている。
(2)しかしながら、裁量労働制の適用対象の拡大や労働時間規制の適用除外の拡大といった労働時間規制緩和が、ワーク・ライフ・バランス等に配慮した労働時間規制とどうしてマッチするのか、全くマッチングするはずがない。これらの労働時間規制緩和は結局のところ、使用者が労働者に対して好きなだけ無限に労働に従事させることを可能にするものであり、長時間過密労働に苦しむ労働者はワーク・ライフ・バランスどころか健康な生活すら送ることができなくなることは自明である。
日本労働弁護団は労働者の権利擁護のために日本全国で活動している弁護士の団体であり、労働者や労働組合から数多くの労働相談を直接受けている。この間も、年間の労働時間が優に3000時間を超えるペースで休みも取れず何とか休ませてもらいたいといった過酷な長時間労働に関する相談や、定時でタイムカードを打たせ、その後もサービス残業を強いられているといった相談、過酷な労働の末に過労死や過労自殺に至るといった相談など、我が国における労働環境は改善するどころか、最低限の労働基準を定めた労働基準法すら守られていない実態が蔓延しているのである。
厚労省が2012年6月に発表した2011年度の「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」でも、過労死など、脳・心臓疾患に関する事案の労災補償の請求件数は898件で、前年から96件増えて2年連続で増加し、精神障害に関する事案の労災補償の請求件数は1272件で、前年から91件増えて3年連続で過去最高を記録した。また、この内、自殺(未遂を含む。)に係る精神障害の労災補償の請求件数は202件で、これも前年から31件増えて3年連続で増加を続けている。
また、割増賃金の支払の是正勧告を受けて是正した企業でその支払額が1企業当たり合計100万円以上となった企業数は、ここ9年1000社を超え続け、対象労働者数も10万人を超え続け、是正支払額は100億円を超え続けている。当然のことながら、割増賃金を支払いサービス残業を是正したのは、氷山のほんの一角である。
今我が国に必要なのは、過労死・過労自殺を根絶することを目的とした「過労死防止基本法」のような労働現場における長時間労働に対する規制を強化する法律であり、また、今既にある労働時間法の使用者による遵守を徹底するための政策(労働基準監督官の増員、サービス残業を行った企業に対する刑事罰や企業名の公表等の制裁措置の強化等)であり、労働時間規制緩和政策は今の時代に求められる政策とは全く逆方向の政策である。
過去にホワイトカラーエグゼンプションを導入しようとした動きは国民の猛反発にあって葬り去られた。政府の有識者会議はまた同じ過ちをしようとしている。労働者が真にワーク・ライフ・バランスを実現できる労働時間規制を強化する政策(実労働時間の上限の法定、所定外・休日労働の事由の規制、延長時間の上限の法定等)こそが今実現されるべきである。そして、労働時間規制を強化することでワーク・シェアリングを図り、失業者の雇用促進を実現することができる。
3 派遣規制緩和について
(1)規制改革会議が第3回会議で示した4WGにおける検討項目(案)では、労働者派遣に関して、「『付随的業務』の範囲等の見直し」、「派遣元の無期雇用労働者に関する規制の緩和」、「医療関連業務における労働者派遣の拡大」といった事項が並べられている。
また、産業競争力会議における人材力強化・雇用制度改革の主査長谷川氏の資料には、「過剰な派遣労働規制、有期雇用規制の見直し(30日以内の派遣禁止、付随的業務の扱い、有期雇用の無期転換規定など)」と記されている。
(2)しかしながら、これまた政府の有識者会議の議論は時代に逆行した議論である。
派遣労働は、違法派遣や日雇い派遣など、派遣労働者の低労働条件・悪就業環境が指摘され、2008年秋には、いわゆるリーマンショックの際の大量の派遣切りが行われるという事態が起こり、労働者派遣法を抜本改正し、労働者派遣事業を規制し派遣労働者の不安定な地位・雇用を是正して、派遣労働者の保護と雇用安定を図る必要があることから労働者派遣法が改正され、昨年10月1日に施行されたばかりである。派遣労働の規制の必要性が指摘され、30日以内の日雇い派遣の原則禁止や違法派遣があった場合の労働契約申込みみなし規定など、派遣規制が僅かではあるが実現されたにもかかわらず、また規制緩和の方向に舵を切ることは派遣労働者の雇用不安定をまたもや増大させるものであり到底容認できない。
先の派遣法改正では、製造業派遣及び登録型派遣の禁止規定が抜け落ち、これらは国会の付帯決議で、本法施行後一年を目途として、論点を整理し、労働政策審議会での議論を開始することとされている。製造業派遣や登録型派遣の不安定雇用は今なお続き、派遣社員はその不安定な雇用故に生活を脅かされている現状が続いているのである。今求められている議論は、派遣労働者の労働環境を改善するために製造業派遣や登録型派遣を禁止・制限するための議論である。
また、今後の労働者派遣制度の在り方を考える研究会でも、専門26業務と自由化業務の区別を無くす議論や派遣法の根本にある常用代替防止の考え方を見直すことについて議論がされている。しかしながら、臨時的一時的業務であるからこそ労働者派遣は法律上許容されているのであって、常用で雇用したければ、直接・無期限で労働者を雇用すればよいだけである。これを派遣に代替して使用したいというのは、結局のところ、使用者が都合のいいときだけ労働者を使い、不要になったら直ちに切り捨てるという、労働者の生活を全く顧みない使用者にのみ都合のよい論理に過ぎない。
4 人間らしい生活を継続的に営める人間らしい労働条件を実現できる労働法制の実現を
政府の有識者会議は、財界を中心とした人員で構成されており、労働者・労働組合の意見や利益を代弁する立場にある者抜きに議論が進められている。労働の現場や実態を全く知らない使用者の論理で物事の議論が進められているのである。
我が国の市民・労働者が多様化して行く中、様々な生き方、働き方を自らの意思で選択することができる社会の実現は、労働の実態について全く無理解な現在の政府の有識者会議による安易な労働規制緩和を行うことによっては実現することはできない。
今我が国に求められているのは、不安定雇用や過酷な長時間労働の撲滅・是正、労使の労働条件を実質的にみて対等に決定できる仕組みの構築である。また、ブラック企業と言われるような労働関係法規を遵守しない使用者に法の遵守を徹底的にさせる仕組みの構築である。更には、労働法を国民社会に浸透させるための学校、地域、職域、その他で行われる労働者教育を推進する施策の構築である。
人間らしい生活を継続的に営める人間らしい労働条件を実現できるこれら施策の構築のための議論を行い、その実現がされるべきことを強く求めるものである。
以上