読売新聞 2014年10月07日
学費を払えずに、学ぶのをあきらめる大学生が増えている。意欲ある学生が勉学に励める支援策の充実が求められる。
文部科学省の調査によると、2012年度に全国の大学や短大などを中途退学した学生は7万9000人に上った。
このうち、経済的理由での中退が20%を占める。前回の07年度調査より6ポイント増加した。文科省は「不況の影響が続き、家庭の経済的な格差が広がったことが背景にある」と分析する。
授業料の支払い猶予など、大学側の柔軟な対応が欠かせない。
政府の奨学金を利用しやすくすることも大切だ。文科省は、大学卒業後の年収に応じ、毎月の返済額を変えられる「所得連動返還型奨学金」の導入を目指している。弾力的な仕組みは、返済の負担を軽くする効果が期待できよう。
奨学金は、無利子に比べて有利子の方が多い。経済状況の厳しい学生が安心して利用できるようにするには、無利子の貸出枠を増やしてもいいのではないか。
気がかりなのは、学業不振での中退も目立つことだ。経済的理由、転学に次いで多い。
近年、大学生の学力低下が指摘される。少子化の中で生き残りを図る大学が、定員確保を優先した結果、授業についていけない学生が増えている可能性がある。
大学全入時代を迎え、取りあえず入学したものの、意欲がわかず、学業不振に陥る学生もいる。
各大学は、補習などの支援に加え、教職員が学生の相談に乗り、きめ細かくアドバイスする体制を整えてもらいたい。
大学と学生のミスマッチを防ぐためには、大学が情報発信を充実させ、求める学生像や教育内容を明確に示す必要もある。
受験生は将来の進路を見据えた上で、志望する大学や学部を決めることが望ましい。高校側にも適切な進路指導が求められる。
12年度に休学した学生は、6万7000人だった。そのうち、海外留学を理由にした休学は1万人にとどまる。
海外で異文化に接し、様々な経験を重ねる留学は、学生が成長する上で貴重な機会だ。
ところが、「卒業が遅れ、就職で不利になる」といった懸念が、学生には根強い。企業の間に、留学体験を積極的に評価する意識が広がってほしい。
学生が留学時に取得した単位を、日本の大学が卒業単位に認定するなど、留学しやすい環境を整えることも重要だ。