信濃毎日新聞 〔社説〕フリーランス 法的な位置づけが必要だ (8/22)

〔社説〕フリーランス 法的な位置づけが必要だ

信濃毎日新聞 2019年8月22日

 情報技術の発達などを背景に、時間や場所に縛られない働き方を選ぶ人が増えている。組織に属さず、個人で仕事を請け負うフリーランスとして働く人が300万人余に上るとの試算を内閣府がまとめた。

 就業者全体の5%ほどだ。会社員や主婦が副業で手がけることも多い一方、専門的な知識・技能を生かそうと会社勤めを辞めて独立する人が目立つという。育児や介護で制約を抱えながら働く人の選択肢にもなっているようだ。

 やりたい仕事を選べ、職場の人間関係に悩まされないことも個人で仕事をする利点なのだろう。ただ、企業との関係でフリーランスは弱い立場に置かれやすい。

 現行法令による労働者の保護は企業などに雇用されて働いていることが前提だ。雇用関係ではない働き方をする人のセーフティーネット(安全網)は乏しい。一方的に不利な扱いを受けないよう、法制度の見直しが欠かせない。

 連合の調査では、報酬の支払いが遅れたり、不当に報酬を低くされたりといったトラブルを半数以上が経験していた。もめて仕事をもらえなくなるのを恐れ、泣き寝入りさせられることも多い。

 公正取引委員会は昨年、企業側による無理な条件の押しつけは独占禁止法違反として取り締まりの対象になり得るとの指針をまとめている。一定の是正効果は見込めるものの、個人事業者として保護するだけでは十分でない。

 法令上、労働者とみなされないフリーランスに最低賃金は適用されず、産休や育休の制度もない。一部の特例を除いて労災保険にも加入できない。休業中の補償がないため、けがや病気で働けなくなれば途端に収入は絶える。

 年金などの社会保険料も全額自己負担だ。企業にすれば人件費を抑えられ、契約の打ち切りも従業員を解雇するよりたやすい。それだけに、都合よく使い捨てできる労働力として扱われかねない。

 政府は契約条件の透明化などの法整備を図るというが、それにとどまらず、労働法令による保護をどこまで適用するか。踏み込んだ検討が必要になる。取引先の従業員と変わらない立場で仕事をしているような人は実質的な労働者とみなすべきだろう。

 ドイツでは、労働者と個人事業者の中間的な類型を設けて労働法令を一部拡張して適用しているという。「自由で柔軟な働き方」だと政府が後押しをするのなら、実態を詳しく把握し、法的な位置づけを明確にすべきだ。

(8月22日)
 

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