第7回 語られない自由時間――日本人のセックスレスライフ

第1回目の講座で、1日24時間の生活時間は、労働時間、生活必需時間、家事時間、自由時間に分けることができると言いました。この区分で言えば自由時間に当たる行動の一つにカップルのセックスライフがあります。しかし、それはきわめて人間的な営みでありながら、自由時間の行動としてはほとんど語られることがありません。

日本社会では、カップルの会話や家族の団らんの時間が短いことはよく知られています。もうお馴染みの2005年NHK「国民生活時間調査」によると、勤め人の平日の「会話・交際」時間は、男性が11分、女性が20分です。指定された2日間の調査対象日にもしセックスのために何らかの時間を費やしたとすれば、この「会話・交際」時間に記入されるのでしょうか。関連する行動別の時間区分としてはこれしかありません。もしかすると調査設計者にも回答者にもセックスライフの時間意識が欠けているということも考えられます。

いや意識されていても、日本人の平均的生活から言えば、2日間ではセックスの時間はゼロという可能性が大です。デュレックス(コンドーム)で知られるSSLインターナショナル社が世界41か国、35万人以上を対象におこなった調査では、1年を通して最もセックスをしているのはフランス人(137回)、最もしていないのは日本人(46回)でした。世界平均(103回)からも大きく隔たっています。

昨年の3月から4月にかけて各紙に報じられたように、日本人のセックスレス夫婦の割合は3組に1組以上に達していることが、厚生労働省研究班(主任研究者=武谷雄二・東京大医学部教授)の調査でわかりました。結婚している男女が、病気や単身赴任といった特別な事情がないのに1か月以上性交渉をしない「セックスレス」の割合は35%(45歳以上では46%)で、2年前の調査より3ポイント増えたそうです。

ネット検索をしていたら、静岡労働研究所副理事長(県評議長)の大橋定夫氏が書いた<世界標準並の「愛し合う時間」保障を!> という文章がありました。大橋氏は、昨年6月9日付けの朝日新聞に載った産婦人科医の堀口雅子先生の「過重労働で帰宅したら眠るだけだから、という人たちも多い。ところが政府も企業もこの点についての危機感が低すぎる。……私たちは、働き方の見直しは非常に重要だと考えている」という指摘を引用しています。

過重労働で疲れて帰宅したら眠るだけではセックスレスもさもありなんです。その意味でこれは働き方の見直しを迫る大問題です。

この記事を書いた人