日本の男女の労働時間には大きな開きがあります。総務省「労働力調査」で2007年の平均結果を見ると、年間ベースの平均労働時間は男女計では2148時間ですが、性別には男性2348時間、女性1810時間で、538時間もの差があります。これはずっと昔からあったことではなく、ここ30年あまりのあいだに進行した現象です。
そこで今日は男女の労働時間がだんだんと開く傾向について見てみましょう。私はこの傾向を1990年代の初めに書いた論文で、「労働時間の性別二極化」と名づけました。この傾向がもっとも顕著に現れたのは、1970年代から80年代にかけてです。この時期、とくに80年代の後半はバブル経済の影響による残業の増大のために、男性の労働時間は非常に長くなり、「過労死」が時代を映す現代用語になるほどに増えました。しかし、男女計の平均労働時間はほとんど横這いに推移しました。それは男性の平均が長くなった分だけ、女性の平均が短くなったからです。
表 労働時間の性別二極分化 1975−1990年
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時間区分
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1〜34
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35〜42
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43〜48
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49〜59
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60〜
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男性
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1975年(%)
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6.4
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21.0
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37.1
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22.1
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13.4
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1990年(%)
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7.5
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17.9
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26.5
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25.6
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22.5
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女性
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1975年(%)
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17.5
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26.5
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37.5
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13.5
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5.0
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1990年(%)
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28.0
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27.9
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25.9
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13.0
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5.1
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(出所)総務省「労働力調査年報」各年版
上の表(図のほうが明瞭に示せるのですが、うまくアプロードできません)は私が1992年に書いた論文で作成したものです。これを見れば、1975年から1990年の間、男性は短時間労働者(1〜34)の割合はほとんど変わっていないのに、中位の労働時間の人の割合が減って超長時間労働者(60〜)が13.4%から22.5%へ、9ポイントも増えています。逆に女性は超長時間労働者の割合はごくわずかしか変わっていないのに、中位が減って短時間労働者が17.5%から28%へ11ポイントも増えています。これは男性は残業が増えて、女性はパートが増えた結果です。
ここには今日のワーキングプアの大量化に通じる大きな問題が潜んでいます。次回はこの労働時間の性別二極分化が最近ではどうなっているかを見ることにします。