4月29日から5月5日までの1週間は、大学教師の私にとって、あいだの金曜日に授業がないので、「ゴールデンウィーク」の大型連休といえなくはありません。
しかし、最近は大学も世知辛くなって、休日で欠けた授業は後日の振り替え授業で埋め合わせをしなければならなくなっています。同僚のなかには、連れ合いと旅行に出かける人もいますが、私は米寿を過ぎた義母の介護があって家族旅行もままならず、家で泣き泣きパソコン仕事をしています。
ネットの「語源由来辞典」によれば、「ゴールデンウィーク」(GW)という言葉は、1951年のこの時期に上映された映画『自由学校』が正月やお盆興業よりヒットしたことから、当時大映専務であった松山英夫氏が造った和製英語らしく、当時のラジオでもっとも視聴率の高い時間帯を「ゴールデンタイム」と呼んだことに倣ったものであるようです。
この言葉は、正月とお盆を除けば、ほかにこれという連続休暇がなく、年休(年次有給休暇)もほとんど取れない日本の現実の悲しい表現として誕生したともいえます。GWと命名されてからほぼ半世紀が経った今でも、年休の取得日数は、下がりこそすれ、増えていません。民間企業を対象とした厚労省の調査では、2009年の年休付与日数は18日、取得日数は8.5日で、取得率は47%にとどまっています。
平均8日から9日取得しているといっても、たいていは病休の振り替えか、休暇以外のやむを得ない私用に当てられていて、連続休暇どころではありません。フランスの付与日数37日、取得日数34日と比べると大違いです。下に掲げた 「オンライン旅行社エクスペディア調査 国際有給休暇比較2008」を参照してください。
去る3月3日の「朝日新聞」によれば、政府の観光立国推進本部(本部長・前原誠司国土交通相)は、日本を五つのブロック(「北海道・東北・北関東」「南関東」「中部・北陸・信越」「近畿」「中国・四国・九州・沖縄」)にわけ、春と秋の2回、週末を絡めて順番に5連休にする案を構想しているそうです。これが実現すると、現在のGWはなくなります。狙いは混雑を緩和し、観光需要を引き出すことにあるようです。
しかし、休日をばらばらにすることは、企業にも学校にもさまざまな困難を生みます。大学では学会の全国大会の開催ができなくなる恐れがあります。それはともかく、そもそも正月や盆やゴールデンウィークの混雑を緩和するには、会社指定のカレンダーで労働者を縛る慣行をやめて、労働者が希望する時期に自由に年休を行使できるようにするほうが効果的です。GWの分散というへんてこな朝三暮四案を考える暇があるくらいなら、2週間以上の連続休暇を定めたILOの有給休暇条約を批准し、年休取得率を抜本的に高める施策のために知恵を絞ってほしいと思います。