とんでもない話に、腹が立つやら、嘆かわしいやら、呆れ返るばかりです。それって沖縄米軍基地についての日米合意のことかって? それももちろん腹が立ちますが、もうひとつ、あいた口がふさがらないのは、民主党が「最低賃金を引き上げる」という昨年9月の総選挙公約をほごにしたことです。
28日の日経新聞は、「政府は企業が従業員に支払う義務を負う最低賃金について景気状況に配慮しつつ、2020年までに全国平均で時給1000円を目指すとの目標を策定する方針を固めた」と書いています。記事には「大幅先送り」という見出しがついていますが、遅くとも次期選挙までに実現を目指すというのが選挙公約ですから、下野しているかもしれない10年後に先送りするというのは、公約を棚上げ、取り下げ、撤回したも同然です。
「政権交代」を売り看板にした民主党のマニュフェストは、「最低賃金を引き上げる」という公約について次のように書いていました。
【政策目的】
○まじめに働いている人が生計を立てられるようにし、ワーキングプアからの脱却を支援する。
【具体策】
○貧困の実態調査を行い、対策を講じる。
○最低賃金の原則を「労働者とその家族を支える生計費」とする。
○全ての労働者に適用される「全国最低賃金」を設定(800 円を想定) する。
○景気状況に配慮しつつ、最低賃金の全国平均1000 円を目指す。
○中小企業における円滑な実施を図るための財政上・金融上の措置を実施する。
【所要額】
2200億円程度
ここに示されているように、「全国最低賃金」(800円)の設定と、最低賃金の全国平均1000円への引き上げが民主党の公約でした。現行の地域別最低賃金では、フルタイム並に年間2112時間(1日8時間×264日)働いても、年収は、天引き前でも東京(791円)で167万円、大阪(762円)で161万円、沖縄(629円)で133万円、全国平均(713円)で151万円にしかなりません。これが全国平均で1000円に引き上げられたとしても、年収は、税金や社会保険料を差し引けば、185万円ほどにしかならず、「労働者とその家族を支える生計費」には遠く及ばず、単身の若者でもワーキングプアから抜け出すことはできません。その意味で、民主党の全国平均1000円という公約は高すぎるどころか、きわめて控えめな、というよりむしろ低すぎる引き上げ目標でした。
そもそも、まじめに働いている人が生計を立てられない社会は間違っています。だからこそ民主党は「まじめに働いている人が生計を立てられる」社会にしていくための政策を公約に掲げたはずです。それさえほごにするというのですから、呆れてあいた口がふさがりません。