第116回 書評? 鶴田満彦『グローバル資本主義と日本経済』

週刊エコノミスト 2009年7月21日号 

鶴田満彦『グローバル資本主義と日本経済』
桜井書店、2400円+税

21世紀に入り「グローバル資本主義」を看板に現代資本主義論が新たな高まりを見せてきた。それがなにゆえかを教えてくれるのが本書である。論といえるにはがっしりした理論がなければならないが、本書はその資格を十分に有している。

本書の特徴と面白さは、日本経済に軸足を置いて、「恐慌」、「グローバリゼーション」、「金融資本」、「現代国家」、「国民経済」などのキー概念を一つ一つ理論的に問い直す作業をとおして、グローバル資本主義の歴史像に迫っている点にある。

恐慌については、序論で2008年世界恐慌の原因と特徴を概観する際に取り上げているだけではない。マルクスが考察した資本主義経済に特有の景気循環の理論問題として、あるいは19世紀末大不況や1929年恐慌など、資本主義の諸時代の画期をなす経済史上の事件として、本論でも一度ならず恐慌を論じている。

本論の中心に据えられているのは「現代の怪物」ともいうべきグローバリゼーションである。著者によれば、現代グローバリゼーションは、?インターネットに代表される情報技術革命、?大量の国際投機資金の形成や多様な金融商品の開発に示される経済の金融化、?アメリカによる情報・金融・会計などのグローバル・スタンダードの強制を推進力としている。

著者は現代グローバリゼーションが、世界的な貧富の格差の拡大、環境破壊、さらには国民経済の解体をもたらすことに関連して、反グローバル運動が世界的に広がっていることも見逃していない。興味深いのは、地球市民といってよい人々が、インターネットを利用して情報を交換することによって、「反グローバル運動自体がグローバル化している」(A・ギデンス)ことである。

グローバル資本主義に対する著者の立場は、突き詰めれば「深刻な地球規模の社会崩壊」を避けるために「資本主義を脱却した生き方を選ぶ」(D・コーテン)ことにある。とはいえ、終章「望ましい経済システムを求めて」で述べている日本経済の近未来像は、これよりずっと控えめで、現実的である。

著者によれば、高度成長期に確立した日本型資本主義は、大きく変容したとはいえまだ崩壊していない。当面は、長時間労働や過労死などの反社会的な側面を払拭して、アメリカ型資本主義モデルに対抗する「公正なルールをもつ資本主義」を実現することが課題である。

補論に収められている7編の書評も、主題に関する討論として一読に値する。

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