東日本大震災と原発事故の影響で、大勢の人が職を失いました。しかし、3月11日から2か月半が経った今でも、その全容が明らかになったとはいえません。
厚生労働省が5月25日に発表した「震災による雇用の状況」(3月12日〜5月22日の速報値)によると、震災を理由とした求職者は、被災3県で3万8,474人(岩手 7,687人、宮城 22,200人、福島 8,587人) を数えます。
また、失業手当を受けるための「雇用保険離職票」の申請件数(人数)は、岩手・宮城・福島の被災3県で、前年比2.4倍の11万1573人に上っています。前年同期は4万6818人でしたから、その差の約6万5000人は、おそらく震災と原発事故によって失職したものと考えられます。
このうち、雇用保険受給資格決定人数は、前年比3倍の7万200人でした。この場合、前年同期は2万3510人でしたから、約4万7000人が震災・原発事故関連で失業手当の給付を認められたと推定できます。
この厚労省の発表は数字を羅列しているだけで、何の解説もありません。上の数字からわかるのは、震災と原発事故によって職を失った人の総数は、ざっと3万8000人から6万5000人に達するらしいということぐらいです。もちろん、この数字には、震災によって職だけでなく命も失った数千人の死者・行方不明者(5月26日現在の死者・行方不明者総数約2万3850人の3割が有職者としても約7千人)は、含まれていません。
また、この数字には、雇用労働者であっても、非正規労働者の多くがそうであるように、社会保険に入っておらず、雇用保険の受給資格がない人々は含まれていません。さらに、この数字には、雇用関係を結んでいない農業者や漁業者を含む自営業者や、その家族従業員のうちの震災・原発事故関連の休業者は、事業の継続をあきらめてハローワークで求職活動をしているのでないかぎり、反映されていません。
今回の震災と原発事故では、被災3県だけでなく、全国的に部品や電力の不足によって、経済活動に深刻な影響が生じました。また、震災と原発事故後の消費の落ち込みによる雇用の減少も、無視できない規模に達していると考えられます。しかし、大まかにせよ、こうした状況を把握するためのデータはまだ一部しか発表されていません。
総務省が4月28日に発表した3月の2人以上世帯の「家計調査」によると、1世帯当たりの消費支出は29万3181円となり、物価変動を除いた実質で前年同月比8.5%減少しました。これは比較可能な1964年1月以降では、石油ショックの影響があった74年2月(7.2%減)をも上回る数字で、過去最大の落ち込みとなりました(共同通信、4月28日)。
この消費の落ち込みの雇用への影響はまだ定かではありませんが、部品や電力の供給不足と合わせて考えると、震災と原発事故による雇用の間接的減少は、製造業から小売り・サービスの全域におよぶものの推測されます。