第60回 12時間働くことが売りの会社を嗤う

今日は所定労働時間(就業規則に定められた始業から終業までの時間)ついて考えてみましょう。

就活を終えた学生から金融業界の会社紹介パンフをいくつかもらいました。大手生命保険会社のパンフの所定労働時間(「勤務時間」)は、9:00〜17:00となっています。しかし、同じパンフで紹介されている同社のやり手模範社員の働き方は所定労働時間など何処吹く風です。

入社15年目の業務推進部長のH氏を例にとれば、出社は7時30分、退社は20時です。彼は出社からは5時間後の12時30分に昼食を取りますが、30分後の13時には早くも仕事を再開し、そのまま夕食も取らずに勤務を続け、20時に退社します。

彼は所定7時間(9時〜17時)、実働12時間なので、1日5時間の時間外労働を行っていることになります。厚生労働省「毎月勤労統計調査」によれば、2009年4月の金融・保険業(規模500人以上)の出勤日数は20日でした。これを基準にすれば、H氏の月当たりの残業は100時間(法定8時間を基準にすれば4時間×20日で80時間)と推計されます。

厚生労働省は単月で100時間、2〜6カ月の平均で月80時間を超える残業があれば過労死・過労自殺を発症する恐れがあるとしています。H氏は、たとえ休日労働を度外視しても、明らかに過労死ラインの残業を行っています。

金融業界の他社のパンフも、模範社員の1日のスケジュールはだいたい8時〜20時になっています。学生に訊いてみると、「金融関係を志望する学生たちはふつう8時から20時までを定時と思っているのではないでしょうか」という答えが返ってきました。
ここには本来の定時という観念はまったくありません。1日7時間という所定労働時間のしばりも、1週40時間・1日8時間という法定労働時間(使用者が労働者に命ずることのできる最長労働時間)の遵守も糞食らえという感じです。

 それにしても1日12時間働くことがそんなに自慢できることでしょうか。誇らしいことでしょうか。こういうリクルートパンフを恥ずかしげもなく作る会社の文化を疑います。

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