過労死を考える全国家族の会と過労死弁護団全国連絡会議の運動が実って、2014年6月、「過労死等防止対策推進法」(略称・過労死防止法)が成立し、同年11月1日から施行されました。それとともに、法にもとづいて厚生労働省に設けられた「協議会」を経て、2015年7月には「過労死防止対策大綱」(「過労死等の防止のための対策に関する大綱 〜過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ〜」)が閣議決定されました。
法の制定にともない、11月を中心に厚労省および都道府県労働局と民間の過労死防止団体とが協力・連携して、全国各地で過労死防止のシンポジウムや啓発集会が行われるようになりました。また、過労死の総合的で本格的な調査研究がはじめて国の責任で行われることになりました。それらの成果の一部は、近く厚労省から公表される「過労死防止白書」(過労死等防止対策に係る年次報告)に盛り込まれています。
こうした国の取り組みと並行して、民間でも過労死(過労自殺および過労疾病を含む)に関する調査研究を行い、その成果を過労死の効果的な防止のための対策に生かすことを目的に、「過労防止学会」が結成され、2015年5月23日(土)午後、明治大学駿河台キャンパスで第一回大会が開催されました。会員は現在約230名で、学際的、分野横断的に、過労死被災者の家族、勤労者のいのちと健康に関心をもつ医師、研究者、弁護士、活動家、ジャーナリスト、その他本会の目的に賛同する個人から構成されています。
昨年行われた結成大会の記念シンポジウムでは、「急がれる過労死の調査研究と防止対策――いま何が問われているか」をテーマに、寺西笑子会員(過労死家族)、熊沢誠会員(社会政策)、加藤敏会員(精神科医)が報告を行い、ノース・スコット会員(労働社会学)、岸玲子会員(産業医学)、西谷敏会員(労働法)、東海林智会員(ジャーナリスト)が討論に立ちました。
今年の大会は、関西大学千里山キャンパス(経済学部)を会場に開催されます。第1日目の5月21日(土)午後は過労死国際シンポジウムがあります。このシンポでは、日本、韓国、フランスの専門家が「過重労働による健康障害と労働時間規制」をテーマに報告します。日本以外の報告には通訳がつきます。
日 本: 天笠 崇さん 代々木病院精神科医師
精神医学から見た日本の過労自殺対策と過労死防止法
韓 国: イム・サンヒョクさん 労働環境健康研究所所長
韓国における過労死問題の現状と課題
フランス: セバスチャン・ルシュバリエさん 国立社会科学高等研究院教授
フランスの週35時間制:時短の一方で労働強度の増大と作業組織の再編で高まるストレス
第2日目の22日(日)午前は、四つの分科会−−第1分科会:道路旅客運送業の労働実態、第2分科会:教員の過重労働と公務災害、第3分科会:ホワイトカラーの労働時間管理、第4分科会:若者の過重労働−−が開かれます。22日午後は、共通論題で、「過労死防止法・大綱と労働時間の制限・短縮」について報告と討論が予定されています、
過労死とその防止に関心のある方はこの機会にぜひご入会ください。年会費は一般会員5,000円、労死遺家族・大学院生・学生会員2,000円です。未入会あるいは非会員の方のご参加も歓迎します(資料代および大会準備費として当日受付で参加費1000円をいただきます)。
詳細に関しては http://www.jskr.net/annnai/514/をご覧ください。プログラムもここにあります。