第340回 韓国で「過労死予防センター」が開設されました

このところ日本と同様に、韓国でも若者の過労死・過労自殺が続発し、大きな議論を巻き起こしています。それを実感させられたのは、本年11月8日、同国の「過労死予防センター」の開所式に招かれて、報告と討論に参加する機会があったからです。

これより2ヵ月前、長時間労働による「死の行進」を止めようと、ソウル市で30もの労働・市民団体が集まって、「過労死OUT共同対策委員会」が発足しました。過労死予防センターは、その有力な構成団体として、弁護士、社会保険労務士、産業医、組合活動家、過労死家族が連携し、過労死などの相談、予防、救済に取り組むことを目的にしています。

開所式では、労働環境健康研究所の任赫(イム・サンヒョク)医師の司会のもとで、私が日本の過労死問題の現状と過労死防止法について、また姜守乭(ガン・スドル)高麗大学校経営学部教授が労働と消費から見た韓国社会の問題点について講演しました。そのあと過重労働の現場から、ドラマ産業、ゲーム開発、郵便集配、競走馬厩務などで起きた事案が報告されました。

韓国ドラマの制作現場では、昨年10月26日、新人のアシスタント・ディレクターが過労自殺した。日本の電通事件の公表直後に起きたこの事件は、韓国のマスメディアで大きく報道されました。彼の遺書には、「1日20時間働かされ、2、3時間後にまた出勤させられる。これは私が最も軽蔑していた生活だ」という主旨のことが書かれていたそうです。

ゲーム開発部門では、昨年7月から11月の間に、3人の若者が(2人は過労死で1人は過労自殺で)亡くなっています。3人目の28歳の労働者の場合は、過労死する前の10月第1週は95時間55分、第4週は83時間4分の時間外労働を行い、10月前半は無休で12日、10月第4週から11月第1週にかけては連続13日働いて倒れました。

3番目の集配労働者と4番目の競走馬管理士を含め、四つの事例報告に共通しているのは、日本と同様に、韓国でも若者のあいだで相次いで過労死・過労自殺が起きていることです。いまひとつは日本と違って、韓国では青年ユニオンをはじめとして労働組合が真相究明と再発防止に取り組み、労組の活動家を中心に対策委員会が作られて関係企業や政府に改善を求めて働きかけていることです。

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)新大統領は労働時間の短縮に積極的に取り組む政策を打ち出しています。それだけに韓国における過重労働と過労死に対する運動の盛り上がりから目が離せません(2018年1月7日修正)。

詳しい情報は以下のサイトに出ています。

http://safedu.org/pds1/114426 과로사예방센터 토론회_웹용.pdf
 

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