前は見えないが正義は見える
NHKの逆転人生(2019/9/9,10時~)という番組に竹下義樹弁護士が登場します😀
https://www4.nhk.or.jp/gyakut…/x/2019-09-09/…/21712/1795018/
竹下義樹さんとは、龍谷大学の法科大学院で「社会保障法」という授業を9年間(2007-2015)一緒に担当しました。
竹下さんは、最初の授業では自分自身が弁護士として歩んできた歴史を語りました。私より4歳年下の竹下さんは14歳のとき、石川県の中学校で相撲部に所属し練習中の事故が原因で目がまったく見えなくなりました。京都の盲学校高等部に入学して点字を覚えたということです。当時、視覚障害者の仕事はマッサージなどに限られていました。
しかし、竹下さんは何としても弁護士になろうと大学進学を目指し、視覚障害学生を受け入れてくれた龍谷大学法学部に入学しました。法学部に入学後、司法試験を受けようとしましたが、当時、日本では点字による司法試験は実施されていませんでした。法務省に問い合わせをすると、点字の受験は実施していないので、視覚障害のない人と同条件で、通常の試験を受けるようにという回答があったそうです。日本国憲法第14条は「法の下の平等」を保障していますが、当時の政府は、「盲人を特別扱いをしないことが平等だ」という立場で点字受験を冷たく拒否したのです。
竹下さんは諦めませんでした。自分の熱い思いを周囲の人に伝えました。龍谷大学の学生の中で学部を越えて支援の輪が広がりました。さらに、大学を越えて、京都大学、同志社大学、立命館大学など、京都市内の多くの大学、大学院の学生たちも支援に加わりました。国会でも点字受験問題が取り上げられ、竹下さんは参考人として、点字受験の必要性を強く訴えました。その結果、政府・法務省も従来の立場を変えて、点字での司法試験受験を認めることになったのです。
そこから、彼の本当の苦労が始まりました。目が見えても合格が難しい司法試験を視覚障害をもつ人が合格することは至難のことです。まず、点字の六法や法律書がありません。そこで、多くの学生、院生たちが法律関係の多くの本をテープに録音すること、さらに大学を越えた勉強会など、ボランティアで協力してくれました。竹下さんは9回目の受験でようやく合格することができました。その間、支援者の一人であった女性と結婚し、子どもも生まれたので、お金を稼ぐためにマッサージなどのアルバイトをしながら、苦労をしながら勉強を続けたのです。
竹下さんの勉強方法は独特です。多くの人が吹き込んでくれた録音テープを通常の数倍の早さで聴きます。私には早すぎて聞き取れない高い音を彼は聞き分けることができるのです。また、法律の条文を単語カードのように点字に打ち出したものを腰にぶらさげて、それを触りながら歩いて条文をそのまま覚えるのです。また、竹下さんは勉強会や研究会では必ず大きな声を出して質問します。積極的に質問をすることで問題点をすぐに理解しきろうとするのです。
法科大学院の授業では、竹下さんは、学生に向かって、ときどき鋭い指摘をしました。「一流国立大学出身の秀才弁護士は判例について詳しく知っているが、社会保障や労働の事件は、そうした文献だけの知識だけでは、とうてい解決することができない。弱い立場の相談者の実際の悩みを、その生活を含めて深く深く理解しなければならない。たとえば、日本政府は、在日外国人、野宿者、稼働能力のある若い失業者たちが、生活保護を受ける当然の権利を不当に抑圧してきた。こうした政府の態度に対抗するためには、多くの人が協力するネットワークを作ることが必要であり、日本国憲法、国際条約、外国法について詳しい研究者とも連携し、官僚に対抗できる論理を導き出さなければならない」と。
竹下義樹弁護士と私は、彼が修習生時代に京都で行われていた、研究者、弁護士、裁判官、修習生をメンバーとする「労働判例研究会」以来、40年以上に及ぶ付き合いです。
私が保育所保護者会の役員として活動して、市長を相手に保育料引き上げをするなと行政訴訟を起こそうとしたときにも、迷わず竹下さんに代理人を依頼しました。行政を相手の裁判は簡単には勝訴できないので、引き受ける弁護士が少ないのですが、快く引き受けてもらいました。
常に前向きで実践的な竹下義樹さんの話は、これから困難な司法試験を受験しようとする学生たちに大きな力を与えるものでした。一緒に進めた授業の中で竹下さんが話す言葉は何度聞いても、不条理な社会に抗して最も弱い立場の人のために法を活かそうとする点で、法学を学ぶ原点を思い出させるものでした。
竹下義樹さんの半生をまとめて、小林照幸『全盲の弁護士 竹下義樹』(岩波書店、2005年)が刊行されています(https://www.iwanami.co.jp/book/b264177.html)。この本は、韓国語に翻訳され、2008年『앞은 못 봐도 정의는 본다』(前は見えないが正義は見える)として出版されています。
韓国では、2014年、視覚障碍者のための「点字選挙公報義務」を憲法裁判所が拒否したことが問題になりました。
そのときに、市民新聞Ohmynewsが、「前は見えるが正義が見えない大韓民国憲法裁判所」という表題の記事を書きました。この記事の中でも、竹下義樹さんのことが詳しく紹介されています。
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http://www.ohmynews.com/NWS_Web/view/at_pg.aspx…
앞은 보지만 정의는 못 보는 대한민국 헌법재판소
‘시각장애인 위한 점자형 선거공보 의무’ 거부결정 무엇이 문제인가
14.06.24 17:28l최종 업데이트 14.06.24 17:28l김인회(miraeyeon)
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