上場企業300社を対象に株主オンブズマンが実施した労務コンプライアンスに関するアンケート調査の結果がまとまり、同会のHPに発表されました。調査結果の概要全文はこちら。本日(7月22日)の朝日新聞夕刊に関連記事が出ました。
名ばかり管理職、大手企業でも横行 市民団体調査
管理職の権限がないのに、残業代が支給されない「名ばかり管理職」が大手企業でも横行している実態が、企業活動を監視する大阪の市民団体「株主オンブズマン」による主要企業へのアンケートで浮かび上がった。回答企業の3割強は残業代未払いで労働局の是正指導を受けていた。
また、回答企業の1割強で、過労が原因で労災認定を受けた社員がいたという。
株主オンブズマンは4月、東証1部上場企業のうち300社に過去5年の労務管理の実態を尋ねるアンケートを送付。企業名は公表しない条件で、先月までに78社(26%)から回答を得た。
労働基準法の規定で残業代の支給対象とならない「管理職(管理監督)」とみなしている役職は、78社のうち「課長級以上」が55社(70%)、「部長級以上」が8社(10%)、「係長級以上」が3社(3%)、「役員級以上」が2社(2%)だった。
管理監督者について、厚生労働省は「部長・工場長ら労働条件の決定や労務管理で経営者と一体的な立場にある者」とする基準を全国の労働局への通達で示している。これに照らすと、今回の調査で管理職とみなされていた社
員は、大半が「名ばかり管理職」の可能性が高いという。
また、全般的な残業代の未払いについて、26社(33%)が労働局の是正指導を受けたことが「ある」と答えた。未払い額の合計では、エネルギー産業4社の69億〜18億円がトップ4を占め、航空会社の6.8億円、プラントメーカーの2.5億円、製鉄会社の1.2億円と続いた。
さらに、働きすぎで脳や心臓の病気になり、労災と認定された社員が「いる」としたのは9社(11%)。このうち過労死や過労自殺した社員が電機や食品、精密機器などのメーカー4社で計4人いた。
株主オンブズマン代表の森岡孝二・関西大教授は「大手企業でも名ばかり管理職の横行ぶりは予想以上だ。いくら働かせても残業代を払わなくてよいという労務管理は過酷な労働環境を生み、過労死を招く温床でもある。大手は事態を深刻に受け止め、率先して改善をはかるべきだ」と話している。(阪本輝昭)