NHK 2014年6月13日
勤務地や職種などを限定して働くいわゆる「限定正社員」について労働条件の在り方などを検討していた厚生労働省の有識者懇談会は、限定正社員であっても解雇する場合は正社員と同様の厳しい条件があるなどとする骨子案を示しました。
13日示された骨子案によりますと、「限定正社員」には主に、勤務地、職務、それに勤務時間を限定した3つのケースがあり多くの企業で導入が進んでいる一方、限定する内容があいまいな場合も多いため、労使のトラブルを防ぐためにも契約書などで明確に示すことが重要だとしています。
また、店舗などが閉鎖され職場や仕事がなくなった場合の対応については、過去の判例から、直ちに解雇できるわけではなく、配置転換によって雇用が維持できないかなど正社員と同じ厳しい条件で判断されるとしています。
有識者懇談会は、この骨子案を基に来月にも報告書をまとめる予定で厚生労働省は、報告書を受けて「限定正社員」を雇用する際の指針として活用していくことにしています。
広がる限定正社員の登用
「限定正社員」は勤務地や職種、労働時間を限定して働く制度で、厚生労働省が3年前、正社員300人以上を対象に行った調査では回答したおよそ2000社のうち52%の企業が取り入れていました。最近では大手衣料品チェーンの「ユニクロ」や、外食チェーンの「ワタミ」など小売業や外食産業を中心に優秀な人材を確保しようとアルバイトの従業員を地域限定の正社員として登用する動きが相次いでいます。
背景には子育てや介護との両立で転勤や長時間の労働が難しい人が増えているほか、景気の回復や少子高齢化の影響で一部の業種で人手不足が深刻になっていることがあります。
専門家「普及効果に疑問」
今回の骨子案について雇用問題に詳しい日本総研の山田久調査部長は「焦点となっていた解雇ルールについては限定正社員でも、一般の正社員同様に厳格にすべきという内容で、特に目新しい点はなく、現状の追認にとどまっている。働く側から見れば雇用が保障されるので安心だが、経営者側からみれば雇用するリスクは一般の正社員と変わりなく、採用に二の足を踏む可能性もある」と話し、限定正社員の普及につながるか疑問があるとしています。
そのうえで「企業が責任を持って従業員の再就職先を見つけるなど、欧米並みに転職しやすい環境を整えることを前提に、職場がなくなれば雇用契約を解除できる仕組みを導入することができないか、労使で検討を続けるべきだ」と話しています。