若年性認知症で8割失職 厚労省調査

http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2015041902000058.html
中日新聞 2015年4月19日
 
 六十五歳未満で発症した若年性認知症の人に対する厚生労働省研究班の生活実態調査で、就労経験がある約千四百人のうち約八割が勤務先を自ら退職したり、解雇されたりしたと回答したことが、分かった。働き盛りで家計を支えていた人も含まれ、仕事を失った後の生活への不安は強い。

 若年性認知症の発症年齢は平均五一・三歳。症状には個人差があるが、早期に適切な治療を始めれば、進行を遅らせることができる場合もある。労働時間の短縮や配置転換など、仕事を続けるための配慮が十分とはいえず、企業側の意識改革が求められそうだ。

 調査は国や大学と認知症の共同研究をしている認知症介護研究・研修大府センター(愛知県大府市)が二〇一四年夏から年末にかけて実施。秋田、愛知、岐阜、三重、福井、大阪、香川など十五府県の医療機関や介護、障害者施設に調査票を送り、十八〜六十四歳の認知症患者二千百二十九人について、施設担当者らから回答を得た。

 就労経験があると確認できた千四百十一人のうち、定年前に自ら退職したのは九百九十六人、解雇されたのは百十九人で、合わせて79%に上った。定年退職したのは百三十五人だった。

 さらに施設担当者とは別に、本人や家族から回答があった三百八十三人について詳細に分析。発症時に就労していたのは二百二十一人で、内訳は正社員・正職員百二十人、非常勤・パート四十人など。二百二十一人のうち、その後に退職や解雇となったのは計約74%だった。

 約20%の人は労働時間の短縮や配置転換、通勤などの配慮が全くなかったと回答。中重度の要介護者が多く、現実的に就労が難しいケースがある一方、職場での配慮があれば、働き続けることができた可能性もある。

 <若年性認知症> 65歳未満で発症する認知症。2009年の厚生労働省研究班の推計によると、全国に約3万8000人で、平均の発症年齢は51・3歳。女性よりも男性に多いとされる。脳卒中が原因で起こる血管性認知症とアルツハイマー病が大半を占める。働き盛りで症状が出ることが多く、経済的な影響が大きい。40歳以上であれば介護保険を利用できるが、デイサービスなどは主に高齢者向けで、使いづらいといった指摘がある。
 

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