2008年6月21日「朝日新聞」朝刊
トヨタ自動車は、生産現場の従業員が集団で取り組むQCサークルによる「カイゼン」活動について、従業員の活動時間を月2〜4時間に抑える指針をまとめた。サービス残業により社員に過重な負担がかからないように配慮し、総額人件費の伸びも抑える狙いだ。
トヨタは、従来「自主的な活動」としてきた勤務時間外のQC活動を6月1日から「業務扱い」と認定し、これまで月2時間までとしてきた残業代の上限を撤廃した。
新たな指針は、従業員に対して、QC活動の会合を原則月2時間以内に収めるよう指示。月2時間を超える場合は上司の承認を得て「業務扱い」で実施する。
また、QCのリーダーを務める従業員に対しては、活動時間を月4時間以内にするように求めた。QC活動に関する資料をリーダーが自宅に持ち帰って作成するケースがサービス残業につながっているとの批判もあり、資料は最小限の枚数にとどめ、職場で作成するルールも設けた。
トヨタは、国内の生産現場の従業員4万人を8人前後でグループ化し、QC活動を展開する。残業代の上限撤廃だけではサービス残業の短縮につながらない。新指針はQC活動を1人平均3時間程度に抑え、カイゼンには直接結びつかない資料づくりや成果発表会の準備などを簡素化する狙いがある。QC活動の見直しを進める国内メーカーにも影響を与えそうだ。
名古屋地裁で昨年過労死と認められたトヨタ堤工場の元社員は、亡くなる直前の4カ月で16時間をQC活動にあて、土日や有給休暇もつぶして資料作成などをしていたとされる。元社員の妻、内野博子さんは「指針がしっかり運用されるかが大事。QCが業務扱いになったのは第一歩だが、本来は通常の勤務時間内で活動しなければサービス残業の短縮につながらない」と話している。(木村裕明)