月160時間残業、ノルマを自費で穴埋め…自殺した30代店長に労災認定 社長は「適正な環境、十分な給与」と反論
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/519232
沖縄タイムズ 2020/1/8(水) 7:10配信
(イメージ写真)フリー写真素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)
県内を中心に展開する居酒屋チェーン店の男性店長=当時30=が、長時間労働などによって自殺に追い込まれたと遺族が訴え、那覇労働基準監督署が労災認定していたことが7日、分かった。遺族側の代理人弁護士は「深夜に及ぶ過酷な時間外労働によって、うつ病など精神障害を発病した結果、自殺したと認定された」と指摘。今後は同社に対し民事裁判を提起し、損害賠償などの請求を検討する考えを示した。
認定は昨年12月20日付。遺族側の川津知大弁護士によると、男性は2007年ごろに同社の店舗でアルバイトとして採用。13年6月に正社員登用され、店長として勤務した。店舗の売り上げや従業員の管理、メニュー開発などの業務にあたっていたという。
1日3〜5時間程度の時間外労働が日常的にあり、さらに17年4月ごろから他店のヘルプやアルバイトの同時退職などで時間外労働が増加。月平均の時間外労働は、過労死ラインとされる80時間を上回る120時間以上で、多い時で160時間を上回った。男性は同年7月に自殺した。
月3回の会議では、売り上げに関して社長から叱責(しっせき)され、達成困難なノルマを課せられたという。達成できない場合はポケットマネーで穴埋めせざるを得ず、心理的負荷によって精神障害を発病したとしている。
同社の社長は本紙の取材に対し過労死ラインを上回るような長時間労働は「一切ない」と反論。「店長として高い裁量を与えており、ノルマなど与えたことはない。休日もしっかり取らせ、適正な労働環境だった。生活するには十分な給与も支払っていた」と強調した。自殺については「店の売上金が紛失した問題があり、家庭の事情もいろいろあったことが原因だ。仮に民事裁判に発展すれば全面的に争う」と話した。
残業月164時間超、売り上げノルマを補填…居酒屋店長、精神障がいを発病し自殺 労災認定 会社側は反論
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1053719.html
琉球新報 2020年1月8日 07:00
那覇労働基準監督署は7日までに、県内の居酒屋チェーンで店長として働いていた男性(当時30歳)が長時間労働などで業務上の強い心理的負荷を受けたことで精神障がいを発病し、2017年7月に自殺したとして、労災と認定した。決定は19年12月20日付。男性遺族の代理人弁護士は、多いときには月164時間以上の時間外労働があったと主張した。男性が働いていた会社の社長は本紙の取材に「過重労働になるような勤務状況はつくっていない」と反論している。
男性はアルバイトとして勤務を始め、13年に正社員なり店長となった。代理人の川津知大弁護士が労基署に提出した意見書によると、店長だった男性は月に一度程度の休みしか取れない時期もあり、夕方から深夜にかけての営業時間後、「閉店後に新商品開発を行い、場合によっては朝や昼ごろまで作業を行う」こともあったという。
また、店長としてある程度の権限が与えられていたが「毎日の売り上げに対する人件費や仕入れ原価などの経費の比率が定められており、これを超える分は自分で補塡(ほてん)しなければならなかった」としている。
川津弁護士は「名ばかり管理職で店長としての地位が与えられ、売り上げのノルマに縛られて自分の身を犠牲にして働かなければいけない状況だった」と説明。「商品単価を落とすために人件費が削られている。経営者は人を雇う立場である以上、労働法を守るのが当然だ」と述べた。
■遺族、賠償求め提訴へ 会社は過重労働認めず
那覇労基署で過重労働を原因とする自殺が労災認定された弟について、「弟のように命を落とす人が増えないよう訴えてきたい」と語る男性の兄=7日
那覇労働基準監督署が2017年7月に県内の居酒屋チェーンで店長として勤務していた男性(当時30)の自殺を労災として認定した件で、男性の兄(37)は7日、本紙の取材に「弟のように過重労働で命を落とす人がこれ以上増えないよう社会に訴えていきたい」と話した。一方、居酒屋チェーンの社長は「事実をねじ曲げられている」などと話した。
男性の兄は、男性が1日3時間から5時間以上の時間外労働を日常的に行い、週に1日程度の休日しかなかったと指摘。「過重労働を認めようとしない会社の姿勢に怒りを覚える」と語気を強め、会社を相手に損害賠償を求めて提訴する考えを示した。
社長はこうした長時間労働の常態化について「あるわけがない」と主張。「店長というのは最高経営責任者であって管理責任者だ。拘束する必要がない」と説明する一方、勤怠管理のためのタイムカードを設置していなかったと明かした。
遺族側が主張する店舗の運営経費や売り上げノルマの不足分の補塡(ほてん)は「あり得ない」と説明。「われわれのような商売を一般の組織と同じように見られても困る。従業員とは家族のような親密感がある」と述べた。