http://mainichi.jp/opinion/news/20130813k0000m070126000c.html
毎日新聞 2013年08月13日
国家公務員の月給と期末・勤勉手当(ボーナス)について人事院は改定を求めないことを決め、内閣と国会に報告した。据え置きは2年連続で、給与制度も含め勧告が行われないのは現行方式下では初めてだ。
人事院勧告(人勧)は公務員の労働基本権を制約する代償措置だが、実際の給与は特例措置として2012年度から平均7.8%減額されるなど位置づけは揺れている。政府・与党は労働基本権の回復問題を放置せず、人勧よりも弾力的な給与決定システムの構築を図るべきだ。
据え置きは民間給与調査で官民格差が極めて小幅だったことを踏まえた。制度改正も含め勧告しなかったのは東日本大震災の復興財源対策として特例減額が行われ、実際には民間を平均月給で3万円近く下回っていることを考慮したとみられる。
特例減額は2年限定で、来年春に終了する。人勧によらない給与カットではあるが、非常事態の緊急対応としてやむを得ない措置だった。
だが、人勧が労働基本権を制約する代償措置である以上、いたずらに特例措置を続けることには無理がある。政府は来年度の予算編成にあたり来春以降も給与カットを続けるかどうかの判断を迫られる。原恒雄人事院総裁は人勧に準拠した給与水準の復元が必要だと談話で指摘している。慎重な判断を求めたい。
一方で、人勧制度が果たして将来にわたる給与決定システムとしてふさわしいかという問題がある。
民主党政権は給与カットの見返りとして国家公務員労組に労働協約を締結する権利を認め、人勧を廃止して公務員庁を設置する新制度への移行を目指していた。国際労働機関(ILO)が勧告するように、基本権回復は避けて通れぬ課題である。
ところが自公政権は基本権問題を事実上たな上げしている。そもそもの基本権の必要性に加え、この課題を放置したままでは結局人勧制度に縛られ、弾力的な給与改革ができない点も重視すべきではないか。
政府は秋の臨時国会に向け、公務員の人事管理の司令塔となる内閣人事局の制度設計も進めている。ここでは各省職員の給与ランク別に定数を決める「級別定数」と呼ばれる権限を人事院から移すかどうかで調整が難航している。人事院の将来的な位置づけがはっきりしていないことの反映だろう。
政府は今回の給与カットを地方公務員にも連動させるよう自治体に求めるなど、国の動向は地方にも影響する。地方を巻き込んだ混乱を避けるためにも政府は来春以降の減額についてすみやかに結論を出すべきだ。そのうえで中長期的視点から給与決定方式の検討を急いでほしい。