米欧、雇用危機回避急ぐ 失業給付や賃金補填拡充 (3/26)

米欧、雇用危機回避急ぐ 失業給付や賃金補填拡充
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日経新聞 2020/3/26 22:00 (2020/3/27 0:12更新)

〔写真〕ニューヨークのタイムズスクエアは閑散=ロイター

【ワシントン=河浪武史、フランクフルト=深尾幸生】新型コロナウイルスの拡大を受け、米欧で雇用への影響が深刻になってきた。米国では失業保険申請が過去最高を更新した。ドイツでは時短勤務の申請が急増している。雇用危機を和らげようと、米政府は失業給付を拡大する。ドイツは賃金の減少分を企業と政府が補填する制度を拡充する。失業率の上昇は避けられないが、米国も企業の一部が雇用を維持するなど、過去の危機とは異なる対応もみられる。

米労働省が26日発表した、21日まで1週間の失業保険の新規申請件数は前週比11.6倍の328万3千件と、リーマン危機直後の09年3月に記録した66万件をはるかに上回った。市場は150万件程度と見込んでいたが、予想を超える勢いで雇用情勢が悪化している。米政府は25日に米上院で可決した2兆ドル(約220兆円)規模の大型経済対策に、失業給付を盛り込んだ。解雇された人に4カ月間の所得を保障するのが柱だ。

雇用調整は新型コロナが直撃したホテルや飲食店で顕著になっている。大手ホテルチェーンのマリオット・インターナショナルは数万人を対象にレイオフ(一時帰休)や時短勤務に踏み切った。米ハイアットも5月末まで全従業員の7割が減給とレイオフの対象となった。全米に1200万人の従業員がいる飲食業界は、3カ月で500万〜700万人が失業する可能性があるとの試算がある。

〔写真〕米ニューヨーク州労働局の事務所に集まる人々(20日)=ロイター

欧州では時短勤務が拡大している。ドイツは「クルツアルバイト(時短勤務)」と呼ぶ制度の活用が急拡大している。不況などに伴う勤務時間の短縮や休業などで減る従業員の賃金を、雇用主の企業と政府が分担して補填する仕組みだ。

ドイツでは13日に時短勤務の要件を緩和する法案が議会を通過した。連邦労働局によると、20日までの1週間の申請件数は7万6700件と19年平均の週600件から大きく増えた。

独フォルクスワーゲン(VW)はドイツ国内の従業員の約3割に相当する約8万人に時短勤務を導入した。4月3日までの期間、休業する従業員への給与を企業が支払い、政府がその約60%分などを企業に補助する。

ドイツの時短勤務は2008年の金融危機時に失業率の上昇に歯止めをかけたと評価された。コロナ危機にあたり、欧州ではドイツ流の雇用維持策を導入する国が多い。

フランスは17日、85億ユーロ(約1兆円)の枠で「部分失業」と呼ぶ制度を拡充した。休業者の賃金保証額の一部しか補填できなかったのを原則2カ月間は全額を肩代わりできるようにした。条件は異なるが、英国やイタリア、スウェーデンなども同様の政策を導入している。

一方で米国はこれまで雇用を景気の調整弁としてきた。収益環境に応じて機動的に雇用を増減させるのが通例だった。

こうした流れにも変化の兆しがある。米経営者団体「ビジネス・ラウンドテーブル」は19年8月に従業員などすべての利害関係者を重視すると宣言した。アメリカン・エキスプレスのスティーブン・スクエリ最高経営責任者(CEO)は新型コロナ危機に際し「短期的な効果しかない人員削減をもう私はしない」と強調した。

米国民は食料品や日用品を求めて食品スーパーなどに殺到している。流通最大手ウォルマートは15万人の追加雇用を決めた。米経済では失業懸念が強まる一方で、早くも雇用の受け皿が生まれている。

■日本企業、雇用維持へ腐心
日本でも新型コロナウイルスの拡大に伴い、従業員の安全を守るための工場の操業停止や、感染拡大を防ぐ措置としての店舗の営業時間短縮、さらに娯楽施設の休業などが広がっている。日本の場合は正社員、非正規雇用者にかかわらず、給与を一部または全額支払い、雇用を維持している企業が多い。
飛行機の減便が相次ぐ全日本空輸(ANA)は一時帰休を求める客室乗務員に対し、給与の減少分を補填。同社は4月から、全社員の約3割に当たる約5000人の客室乗務員を対象に、1人当たり数日程度、一時帰休させる方針で労働組合に提案し、協議中だ。
3月に4日間、全店で臨時休業をした大丸松坂屋百貨店は社員の給与を減額しないほか、三越伊勢丹も時短営業しても給与は減らさない方針だ。衣料品大手のレナウンは、入居する百貨店が営業時間を短縮した場合でも日給の満額を支払っている。資生堂も同様で、同社は正社員で通常の勤務として扱っている。
人手不足が続く中、雇用をつなぎとめるためにも苦境を耐える企業が多いようだ。
 

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