イタリアでは、労働安全確保で労働組合が大きな役割を果たしましたが、働く人の雇用と生活の補償をめぐっても、CGILを先頭に労働組合が、すべての労働者、働く人を代表して、長期的な制度改善をも展望した大きな成果を獲得していることに注目することができると思います。
■感染拡大で一気に問題化した「解雇の雨」
イタリアでは、この2月後半から新型コロナの感染が爆発的に広がって、政府が「国家非常事態宣言」を、2月23日に発出しました。企業が操業中止や解雇手続きを開始しました。そして、3月初めには、「解雇の雨」と呼ばれる深刻な状況が全国に広がったのです。
3月3日、イタリア航空は1,550人の集団的解雇手続きを開始し、Sirti社(電話設備)764人、Conad社(ハイパーマーケット)135人など、1日で2,000人の解雇が報道され、集団解雇手続きが始まりました。他方、学校閉鎖によって全体で約1万6,000千人の清掃労働者の中で1万1,000人だけは内部の配転措置などで対応しましたが、約4,000人は、個々の学校長を通じて州から給与の半額に相当する失業補償に変わるという通知を受けました。以前からリストラが問題になっていたArcelor Mittal社(鉄鋼)ターラントの8,500人、アリタリア(航空)の1万1,000人などを含めて、イタリア全体に及ぶ解雇の動向が大きく浮かびあがったのです。(2020.3.3 Manifesto)
さらに、エンターテインメント、文化、スポーツ、観光などの分野に雇用されている多くの労働者や、自営業または準従属労働者(parasubordinati impiegati)が、サービスの閉鎖と削減によって、劇的に仕事を失っていました。労働者のための既存の制度が、こうした労働者類似の働き方をする人々には及ばないという問題が浮上し始めることになりました。
また、イタリア政府は、感染率の高い地域(いわゆる「赤」と「黄」地域)で最初に対策を具体化しました。2020年3月1日、新型コロナ蔓延に関する緊急措置(首相令)で、関連労働者に毎月500ユーロの手当を導入しました(最大3か月間)。しかし、これは「赤いエリア」(感染爆発したロンバルディア州とベネト州の11自治体)のみに限定されていました。他地域で感染が広がる中で、保護対象となる被害労働者の範囲拡大が求められることになりました。3月8日付政令で、感染率の高い地域は「強制封鎖」地域に置き換えられ、3月9日から10日までロンバルディアなど14地区で適用していた制限措置が、3月11日、国土全体に拡大されました。イタリア政府は、基本的な公共サービスなど一部の例外を除き、すべての小売・卸売業活動の停止を命じる新しい法令を施行しました。
こうした状況の中で、CGIL(イタリア労働総同盟)、UIL(イタリア労働者同盟)、CISL(イタリア労働者組合総同盟)の3大労組は、こうした事態について、個別の解決では対応できない「全身性」の問題だとして、その解決を政府に強く求めました。そして、3月初めに、与党の民主党、さらに政府と会談することを強く求めたのです。
【脚注】解雇の雨、たった1日で2000人(2020.3.3 Manifesto)